企業のサプライチェーンの再構築や国内回帰が進んでいる。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、グローバルなサプライチェーンの脆弱性が顕在化したからだ。経済政策全般と同様、サプライチェーンの再構築に当たり必要な視点は、原状回復ではない。より強靭で持続可能な「よりよい復興(ビルドバックベター)」だ。加えて、再構築によって影響を受ける人々への配慮を指す「公正な移行(ジャストトランジション)」が求められている。

「よりよい復興」の視点

 経済産業省は2020年5月22日~7月22日、補正予算で組んだ「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」の申請案件を募集した。申請額の累計で約1兆7640億円もの応募があり、146件、約2478億円が採択された 。主な採択案件は、(1)海外における生産拠点の集中度が高く、かつ、サプライチェーンの途絶によるリスクが大きい重要な製品・部素材、(2)国による緊急調達等の対象物資や医療提供体制の確保のために必要となる物資に関する案件だ。国内生産拠点等の整備によって、製品・部素材の円滑な供給を確保し、サプライチェーンの強靱化を図ることを目的に、工場の新設や設備の導入を支援するものだ。

 本稿執筆中の21年3月現在、同補助金の第2次公募中だ。募集要項では、上記表の(1)分類にあたる健康・医療系以外の補助対象については「デジタル」と「グリーン」の大きな分類に分かれている。「よりよい復興」の視点では、こうした補助金は次世代の大きな負債となる財政出動であるからこそ、短期的な赤字補填目的ではなく、中長期的な視野で経済・社会・環境への好影響や持続可能性のあるサプライチェーンの再構築が可能な事業が採択されることに期待したい。

「公正な移行」とは

 21年2月、著者は東京都産業労働局と中小企業振興公社が主催する、中小企業とオープンイノベーションに関するイベントにパネル参加させていただいた。オープンイノベーションを通じた新商品の開発でコロナ禍を乗り切った事例や、医療や環境といったサステナビリティ視点で新分野の参入を果たした中小企業の事例をご紹介した。終了後、内燃系の自動車部品を製造されておられる企業の方から質問をいただいた。EVシフトが加速する中、どのようにして新商品、新分野のビジネスに臨むべきかという点だ。EV化による部品点数の減少による自動車部品メーカーへの影響は様々なメディアで取り上げられている。著者は自動車産業の専門ではないが、この時に頭に浮かんだのは「公正な移行」という言葉だ。