金融・証券業界が、子ども向けの教材開発や教職員向けのセミナーを中心に金融経済教育の普及を積極的に進めている(図表)。政府が掲げる「貯蓄から投資へ」の経済政策にも沿うもので、生徒が主体的に学べるアクティブラーニング型コンテンツや、アニメキャラクターの活用など多種多様だ。その背景には学習指導要領の改訂がある。2022年度から高等学校の新科目「公共」で金融経済、「家庭科」で家庭の資産形成に関する授業がスタートした。中学校の「社会科」「家庭科」でも同様だ。お金に関する知識を、学校で学ぶ時代がやってきた。

 経済団体や消費者団体、学識経験者、関係官庁、日本銀行で構成される金融広報中央委員会は兼ねてから、金融経済教育(金融教育と同義)を積極的に推進してきた。その定義は下記のとおりだ。

金融教育は、お金や金融の様々な働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育である。
出所:金融広報中央委員会「金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-」

■ 金融業界が一斉に金融経済教育に注力
■ 金融業界が一斉に金融経済教育に注力
出所:公開情報から著者作成
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昔の「家庭科」の面影はない

 著者も新学習指導要領に基づいて作成された高等学校の家庭科の教科書を手にとる機会があった。教育図書社の「未来へつなぐ家庭基礎365」だ。一読し、カバーするテーマ範囲の広さに驚いた。著者が高校生の頃、家庭科の時間といえば調理実習と裁縫程度しか記憶にないが、もはや「家庭科」というより「サステナビリティ」の教科書のようである。ライフプラン、保育、福祉、多様性、共生社会、衣・食・住、家計、消費、環境問題、資産形成まで広くカバーされ、章ごとにSDGsの各目標との関係性に触れる。「よく」生きるためのヒント集とでもあり、社会に出てしばらくした大人でも新しい学びがあると思う。

 なぜ教科書を手にしたかというと、この数年、著者の所属チームは、企業や自治体、金融機関に加えて、教育機関でSDGsやESG、サステナビリティ全般の講義や研修、ワークショップを提供する機会が増えたからだ。依頼をいただく教育機関、そして講義を聞いてくれる生徒が今学んでいる内容を知ろうと思ったのがきっかけだ。