新型コロナウイルスの感染拡大が、私たちの生活にもたらした最たる変化は「物理的な移動制限」だろう。旅行、外食、娯楽、通学、通勤、様々な移動が制限された。旅行、外食、娯楽は、コロナが沈静化さえすれば「Go To キャンペーン」にも後押しされ、変革を伴いながらも元に近い形態に戻るだろう。

 では通学・通勤はどうか。通学は青少年の心身発達への影響を鑑みれば、これも元の形に戻っていくはずだ。最も不可逆だと思われる変化は通勤だ。著者もオフィスワークが1割、リモートワークが9割になった。内閣府が2020年6月に実施した意識調査では、東京23区に住む半数以上が「通勤時間が減った」と回答した。うち7割以上が現在の通勤時間を今後も保ちたいと考えているようだ(注1)。

(写真:アフロ)

これからの「良い会社」とは

 著者が所属しているチームでは、長年、企業のESG側面の評価を実施している。「企業は人なり」とよく言われる。S(社会)の側面で最も配慮すべきステークホルダーの一つは、従業員だと位置付けてきた。これまで「従業員に長時間労働をさせない」「従業員の勤怠・勤務時間管理を適切に行う」のが良い会社であり、「決められた労働時間に遅れることなく働く」のが良い従業員とされてきた。基本的にそれは大きくは変わってはいかないだろう。

 しかし、急速にリモートワークが広がり、ジョブ型雇用が普及し、しいては副業・兼業といった働き方が浸透していくと、従業員にとって良い会社の定義は明らかに変わってくるはずだ。例えば、従業員の裁量で時間や場所が決められること、働いた時間ではなくて成果で判断する会社を「良い会社」と見る傾向は、一層、強くなるだろう。

 「良い会社」のヒントに、健康機器で高いシェアをもつタニタ(東京・板橋)の取り組みがある。同社は2017年に「日本活性化プロジェクト」と銘打って、新しい働き方の制度を導入した。これは、従業員が個人事業主として独立することを会社が支援するものだ。日本経済新聞の報道によると、24人の元正社員が個人事業主として働いている(2020年4月時点)。主導した谷田千里社長は、働きたい人が思う存分働けて、適切な報酬を受け取れる制度を作りたいと考えたという。

 つまり、働き方改革は単純に残業時間の削減ではない、ということだ。長期的に見れば、「人生100年時代」の新しい働き方のスタートを企業が支援してくれているようにも見える。

(注1)内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査」(2020年6月)