「ジョブ型」雇用へのシフト

 リモートワークで働き方が変わった会社の悩みの多くは、いかにビジネスの成果を出すかだ。その方策の一つが個々人のジョブディスクリプション(職務内容)の明確化だ。これまで、毎日顔を合わせられる環境で、あうんの呼吸で行われてきた「メンバーシップ型」雇用下では、職務範囲があいまいなものも多かったはずだ。

 しかし、リモートワークの普及によって、職務範囲が明確な「ジョブ型」雇用へのシフトが進みつつある。そうでもしなければ、リモート環境で、組織でゴールを達成するのは難しいからだ。例えば、KDDIでは2020年8月から中途社員に、2021年度から管理職に「KDDI版ジョブ型」を導入するという。ニューノーマル時代に、社員一人ひとりが時間や場所にとらわれず成果を出す働き方の実現を目指す「KDDI新働き方宣言」を公表した。

 富士通や日立製作所でも同様に、ジョブ型の人事制度が順次導入されていくことが既に発表されている。企業によっては、労働組合との調整など様々なハードルがあるのは言うまでもないが、変革が起きているのは事実だ。

加速する兼業・副業

 様々な業務でジョブディスクリプションが明確になると、社内外問わず、スキルや経験を持っている人材を募ることができる。この発想こそ、兼業・副業を加速させるものだ。こうした流れをいち早くキャッチしたのがヤフーだ。2020年7月、「無制限リモートワーク」と称す時間と場所に捉われない働き方への10月からの移行を発表した。同時に、「オープンイノベーションの創出」を目的に、副業人材を今後100人単位での受け入れも打ち出した。

 「従来では交わる機会が得られなかった人材とともに、新たな事業やサービスにつながるイノベーションの創出を目指す」という。8月後半に実施された同社への東洋経済オンラインのインタビュー記事によれば老若男女4500人以上もの応募があったという。

 そもそも予定されていた2020年夏季オリンピックに合わせ、都心部の企業の多くは期間中のリモートワークの準備を進めていた。ジョブ型雇用や兼業・副業も、少子高齢化で生産労働人口が減少する国内では、コロナ禍以前から広がりつつあったムーブメントだ。このような「Ready」な状況に、巣ごもり期間が到来し、リモートワーク、ジョブ型雇用、兼業・副業の一連の流れが想定よりも早く主流化し始めたと言える。

 何が「良い会社」なのか、それは後になってみなければ結局は誰も評価できない。しかし、今聞こえる働き手の声に耳を傾けることが「良い会社」への近道であるのは確かだ。最後に、厚生労働省が2016年に出した報告書「働き方の未来 2035:一人ひとりが輝くために」を引用したい。今回のコロナ禍によってここに描かれた未来がやってくるのが5年程早まったかもしれない(注2)。

 “2035年の企業は、極端にいえば、ミッションや目的が明確なプロジェクトの 塊となり、多くの人は、プロジェクト期間内はその企業に所属するが、プロジェクトが終了するとともに、別の企業に所属するという形で、人が事業内容の変化に合わせて、柔軟に企業の内外を移動する形になっていく。”

 “企業の多様化が進むなかで、一部の大企業はロイヤリティを有した組織運営 を継続していくだろう。しかし、これまでのように企業規模が大きいことのみ では働く人のニーズを満たすことはできず、働く人にどれだけのチャンスや自己実現の場を与えるかが評価されるようになる。”

(注2)厚労省「働き方の未来 2035:一人ひとりが輝くために」(2016年)