「新型コロナウイルスへの対応を機に、リモートワークが急速に普及した。そして、企業の本社機能の地方移転が話題になっている。人口減少による経済の停滞に苦しむ地方にとっては朗報だろう。ただ、地方移転までは踏む切れない企業は少なくない。地方を活性化する新たな人口として注目を集めるのが「関係人口」だ。

 2020年9月、人材派遣大手のパソナグループがコロナ対策や働き方改革の一環で、兵庫県淡路島への本社機能の一部の移転を発表した。本社の約4分の1に当たる1200人を24年までに段階的に移すという。

パソナグループは、同社と関係の深い兵庫県・淡路島に本社機能の一部を移転する

 これをきっかけに様々なメディアで本社機能の地方移転が論じられた。前後2~3カ月の間だけでも、規模や業種が様々な企業が同様の発表をしている(下の表)。

■ 本社機能の地方移転(一部・全て含む)を決定した企業
出所:各社公開情報から著者作成
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 企業にとって、「本社機能の地方移転」という選択肢はコロナ前からあった。内閣府が15年度に施行した地方拠点強化税制では、企業が本社機能を東京23区から地方移転する場合(移転型)と、地方にある企業の本社機能を拡充する場合(拡充型)に、建物取得や雇用促進にかかる費用が減税となる。20年度税制改正で制度の適用期限が22年3月31日まで延長された。今回のコロナ禍は、企業がこの制度を活用する追い風になったとも言える。

 コロナ対策、働き方改革、地方創生、BCP(事業継続計画)――。いずれの理由にせよ、企業とその社員の転入は人口減少に悩む地方経済・社会へのポジティブな効果が期待できる。

 しかし、移転は企業にとっても大きな経営判断だ。前出の事例からも、これまで中長期にわたり移転地との関係を築いてきた延長線にある判断だと分かる。顧客、従業員、取引先といったステークホルダーへの影響を考慮するがゆえに、大手企業であるほど容易に決断できない。そのため、企業の地方移転が地方経済をガラリと変えるようなムーブメントにはまだ至っていないのが現状だろう。

「関係人口」とは何か

 地方にとって、パソナグループのような企業の転入を待つだけではなく、より積極的に人口を取り戻す方策はないのか。その1つのカギが「関係人口」だ。関係人口とは、特定地域に継続的かつ多様な形で関わる人々のことを指す。移住した「定住人口」でもなく、観光に訪れた一過性の「交流人口」でもない。政府の地方創生戦略である第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(2020~24)で追加された概念だ。(下の図)。

出所:総務省・関係人口ポータルサイト
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