社会性と経済性の両面で良いインパクトの創出を目指す「ゼブラ企業」を通して未来のESG投資を考える。

 2021年11月30日、日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)が発表した、20年度末の国内のESG投資残高(報告書内では「サステナブル投資残高」)は、前年比 65.8%増の 約514兆528億円となった。そのうち約7063億円と全体のわずか0.1%だが、前年比403.2%という突出した成長を示したのはインパクト投資だ。端的に言えば、金融がもたらす環境や社会へのインパクトを重視した投資手法を指す。

 前回、ベンチャー投資の世界でも投資先のESGへの取り組みに投資家の関心が高まっていることに触れた。今回は、それに関連し、社会性と経済性の両面で良いインパクトの創出を目指す「ゼブラ企業」のコンセプトについて取り上げ、少し先の未来のESG投資について考えてみたい。

ゼブラ企業とは何か

 ゼブラとは16年に米国の女性起業家4人が提唱したコンセプトで、社会と環境の視点から持続可能な範囲で利益創出や成長を目指す企業の総称だ。評価額が10億ドル超の企業、いわゆる「ユニコーン」を賛美するシリコンバレー文化へのアンチテーゼとして、持続可能な社会のなかでの成長、そうした社会との共存を目指す企業を「ゼブラ」と名付けた(下の表参照)。

 以降、ゼブラ企業を応援するコミュニティ「Zebras Unite」が世界各国に展開され、ゼブラ企業への投資促進やエコシテムの構築が進められている。そして国内でも、この流れが広まりつつある。ゼブラのコンセプトに共感したメンバーが19年から「Tokyo Zebras Unite」としての活動を始め、21年には株式会社のZebras & Company(ゼブラアンドカンパニー)を設立し、国内での実装に向けた活動を推進している。今回、創業者の阿座上陽平氏、陶山祐司氏、田淵良敬氏にインタビューした。

■ ユニコーンとゼブラ企業の違い
■ ユニコーンとゼブラ企業の違い
出所:Zebras Unite 資料をTokyo Zebras Uniteが翻訳・整理した
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認証・格付ではなく「マインドセット」

「ゼブラ企業」を支援することにしたきっかけは。

田淵氏 インパクト投資に従事する中で、これまでのベンチャーキャピタル(VC)が提供する資金支援の型に当てはまらない起業家の資金ニーズに気付いた。社会にインパクトを創出したい起業家は3年でIPO(新規株式公開)を目指すVCの時間軸にそもそもフィットしない企業が少なくない。企業の成長には事業によって遅い速いなど色々なパターンがあるべきと思っていたところにZebras Uniteの創設者に出会った。それを契機にTokyo Zebra Uniteを結成した。

「ゼブラ企業」と名乗るには誰かに評価してもらうものか。ESGの世界だと、様々な格付や認証があり評価機関が存在する。

田淵氏 認証や格付けのように何か評価を受けるためにやらなければいけないチェックリストがあり、そのチェックボックスを埋めればゼブラと名乗ってよいというものではない。「マインドセット(価値観、心構え)」や組織のアイデンティティをどこに置くかが重要だ。

「ゼブラ企業」はスタートアップだけが対象なのか。大企業は対象にならないか。

田淵氏 大企業だからゼブラ企業と名乗ってはいけないというものではない。先ほどの回答にもあるように、ゼブラとはマインドセットのことだ。

陶山氏 企業の成長をとがめるものではないので大企業でもよい。いわゆる100年企業のようなかつての日本企業に、ゼブラ企業はたくさんいると思う。「ゼブラ企業」であることは競争戦略ではない。