3Rから4Rへ、「断る」消費者

 20年5月、経済産業省は「循環経済ビジョン2020」を発表した。それによれば、これまでも00年初頭から国内事業者は3R(Reduce:減らす、Reuse:再利用する、Recycle:再資源化する)に取り組み、廃棄物の最終処分量の削減やリサイクル率の向上などの着実な成果を上げてきたと説明している。近年では、欧米を中心にこの3Rにもう1つのRである「Refuse:断る」を加えて「4R」とするのが一般的だ。例えば、小売店での過剰な梱包に遭遇したとき、消費者自らがまず「断る」ことが望ましい。

 消費者に対して積極的にRefuseを勧めているのが、食材のセレクトショップDEAN & DELUCA(ディーン・アンド・デルーカ)を展開するウェルカム(東京・目黒)だ。自社ウェブサイトで、以下のように訴えている。

 不要なレジ袋や梱包、カトラリーなどへの「いりません」を歓迎します。なぜなら「不用物=ごみ」を減らしたいと考えているからです。(中略)「4R」とは、ごみを減らすサイクル「3R」に、「Refuse(断る、いらないものはもらわない)」を加えた消費活動のこと。今では世界の共通認識です。

ESG評価の視点からみた消費者

 著者のチームで企業をESG(環境・社会・ガバナンス)評価を実施する際、「消費者」は、企業が最も注意を払うべきステークホルダーに位置付けている。特に重視するのは、製品の安全・品質の担保、消費者保護、適切な販売慣行や製品表示、といったS(社会)の側面になる。いずれも消費者の不利益を防ぐための視点だ。

 だが、前述したメルカリやイケア、ディーン・アンド・デルーカに共通しているのは、消費者を巻き込んで一緒にサステナビリティを進めていくという点だ。単純に、売り手と買い手という関係でも、「お客様は神様」という上下関係でもない。本業を通じて、サステナビリティに気付く機会を消費者に提供し、循環型社会の形成という大きな目的を達成にむけて一緒に進めていきたいという姿勢を鮮明に打ち出している。言い換えれば、企業がこのような形で関係を構築できた消費者は、その企業の長期的価値を形成する重要な「資本」とも考えらえるのではないか。

 エシカル消費(倫理的消費)の考え方は数年前からあった。消費者庁の定義では「消費者それぞれが各自にとっての社会課題の解決を考慮したり、そうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと」とある。これまでエシカル消費といえば、オーガニック原料由来とか、地元の手作りといった「平均的な商品と比べて少し値は張るが洗練された商品」というイメージが先行していたかもしれない。だが、そうした高付加価値製品を購買することだけがエシカル消費ではないはずだ。前出の事例のように自社製品のライフサイクルの一部に消費者を巻き込み、循環型のシステム形成の一部を担ってもらうこともエシカル消費の定義に当てはめられるはずだ。

 国内の個人消費はGDPの約6割を占める大きな経済活動だ。だからこそ個人消費がより社会や環境に配慮した方向に向かうことが重要である。コロナ禍のなかで、様々に顕在化した社会課題・環境問題を目の前に、消費者と消費者を取り巻く環境に変化が起きている。企業が消費者へサステナビリティに関する働きかけを行うタイミングとしては今が最適なのかもしれない。