働く人の仕事に対する認知(認識)と取り組む姿勢を、どのように刺激するか。それが一人ひとりの個性を引き出し、内面的な多様性を高め、創造性につながっていく。

 企業がこの先発展するために、働く人の創造性は重要な要素の1つです。創造性は、個人の才能や性格以上に、その人の仕事に対する認知(認識)の仕方によって大きく左右されます。それを示す研究が多くありますので、いくつか紹介します。

創造性と内発的報酬

 72人もの作家を集めて行われた研究があります。まず全員に「雪」をテーマに短い詩を書いてもらい、比較検討用の作品とします。次に作家たちを3つの群に分けます。

 1つ目は、仕事に対する外発的なモチベーションを刺激する群です。作家になる理由を7つ記したアンケートを渡し、順位を付けてもらいます。そこには、「本が一冊ベストセラーになれば、経済的に保証されるから」といった、金銭や社会的地位などの外発的なモチベーション要素のみが並んでいます。実は順位付け自体に意味はなく、作家に数分間、外発的モチベーションについて考えさせるのが狙いでした。

 2つ目は、内発的なモチベーションを刺激する群です。1つ目の群と同様に作家になる理由に順位を付けてもらいます。この群には、「自己表現の機会を得られるから」など、自分の内面から湧き出る喜び、つまり内発的なモチベーション要素のみを記載したアンケートに回答してもらいます。3つ目はアンケートを実施しない比較対象群です。

 その後、作家全員に「笑い」をテーマにした詩を書いてもらいます。そして、彼らとは別の12人の作家が、誰がどの詩を書いたか分からない状態ですべての詩を評価します。

 結果は明快でした。最初の比較検討用の詩では創造性にさしたる違いは見られなかったものの、金銭や社会的地位などを考えた後に書かれた詩は、そうでない詩と比べてはるかに創造性が低かったのです。

 たった数分、外発的な要素を考えるという些細な出来事によって、普段は詩を書くことを愛する人間の創造性が一時的に下がってしまう……。「毎日アメとムチで突き動かして社員を苦しめる職場では、どれほど創造性やモチベーションが低下していることだろうか」。ハーバード・ビジネススクール教授のテレサ・アマビール氏はこう述べています。

外発的報酬のマイナス影響

 創造性に関しては古くから有名な実験があります。ドイツの心理学者カール・ドゥンカー氏が1945年に考案した「ロウソク問題」と呼ばれるものです。行動科学の研究で広く活用され、知見が蓄積されてきました。実験について説明しましょう。

 ロウソク、マッチ、箱に入った画びょうが用意され、被験者は次の課題を与えられます。「机にロウがたれないように、ロウソクを壁に取り付けてください」。多くの人は、画びょうでロウソクを壁に留めようとしますが、うまくいきません。

 答えは、画びょうを箱から取り出し、その箱をロウソク台にして壁に留めるというものです。10分も考えれば解けるものの、なかなかすぐには答えを導き出せません。鍵は、固定化した認知を乗り越えられるかどうか。つまり「単なる画びょうの入れ物」と思っていた箱を、「ロウソク台」という別の用途に活用することを思いつくかどうかです。