変化と困難の多い時代、組織のリーダーがタフでしあわせな組織をつくる重要性が増している。リーダーを対象とした1年間の「レジリエンスプログラム」を紹介する。

 「人格は繰り返す行動の総計である。それゆえ優秀さは単発的な行動にあらず、習慣である」。古代ギリシャの哲学者アリストテレスの言葉です。

 個人の「習慣」に当たるものを、組織では「慣行」と呼びます。例えば、社員の対話の仕方、会議の進行方法、学びの仕組みなど、組織で習慣化された構造を指します。

 丸井グループは、2016年から役員と管理職を対象に「レジリエンスプログラム」を実施し、これまでに部長職以上の約6割が参加しました。1年間のプログラムを通して、まず個人の習慣をつくり、そして組織の慣行をつくります。こうすることで、困難に強くしあわせな人と組織を育むのが目的です。

「4つの健康」を追求

 プログラムの核は「4つの健康」です。身体の健康、情動の健康、思考の健康、精神性の健康を指します。「身体の健康」では、活力を引き出すための運動、睡眠、栄養について学びます。「情動の健康」では、人間の意欲や集団の信頼、一体感がどのようにつくられるかが話題になります。「思考の健康」では、人が最高の力を発揮する状態とは心理学的にどのようなものかについての知識を基に、自己の行動を振り返ります。

 「精神性の健康」では、意味感や目的意識など、健康生成論の重要な要素を理解します。困難な状況でPTSD(Post Traumatic StressDisorder: 心的外傷後ストレス障害)に陥らず、逆にPTG(PostTraumatic Growth:心的外傷後成長)として成長するにはどうするか、事例を基に対話します。

 これらの意味感や信頼などの要素は「内発的報酬」と呼ばれ、お金(給料)や地位(職位)など外部からもたらされる「外発的報酬」より本質的なしあわせや喜びを高め、自律性を向上させることが分かっています。

 当社では、身体、情動、思考、精神性の要素を含む組織の健康状態を12の質問を通して測っています(組織健康度調査)。プログラムの参加者は、これを1つの指標として組織の状態を評価し、試行錯誤しながら、内発的報酬の高い組織に導く慣行をつくっていきます。

 成人発達理論を提唱している米ハーバード大学のロバート・キーガン教授は、経営戦略としての組織文化の研究をまとめた著書(※)において、力強く成長し続ける組織の鍵は「組織の慣行」にあると述べています。組織の慣行とは具体的にどのようなものでしょうか。

※『なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか─すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる』(ロバート・キーガン、リサ・ラスコウ・レイヒー著、英治出版)

対話の慣行

 丸井グループには、社員数約900人のムービングという会社があります。社長や役員、管理職の多くがレジリエンスプログラムに参加しています。各人がチーム力を高める組織の慣行づくりに励んできました。

 例えば、施設物流本部では組織健康度調査を定期的に実施し、結果の「読み解き会」を開いています。マネジャー同士が良い組織をつくる方法を対話する場です。マネジャーは自分のチーム全員にも結果を共有し、ここでも対話を通じて、職場を良くするための施策を皆で決めて取り組みます。4つの健康を切り口に、組織健康度調査で状況を把握し、より内発的報酬の高い職場に進化させる慣行です。