こうした取り組みの結果として、ムービングではストレス度が良好で(全国労働者平均の偏差値を50とすると53.3)、仕事への熱意を表すワークエンゲージメント指数も高い傾向が見られます。

学びの慣行

 ところで、米国国立訓練研究所が提唱した、学習方法と知識の定着度合を分類した「ラーニング・ピラミッド」という図があります(下の図)。7つの学習方法を、知識の定着率の順に並べたものです。これによれば、最も学習定着率が高いのは、自分が学んだことを他者に教えることです。

■ 学習方法と知識の定着率
米国国立訓練研究所(NTL:NationalTraining Laboratories Institute)によるラーニング・ピラミッド。7つの学習方法のうち、最も学習定着率が高いのは、自分が学んだことを他者に教える方法である。このような能動的な学習(アクティブ・ラーニング)は、主体性や対話力を高めることにもつながる
(出所:米国国立訓練研究所)

 ムービングでは、4つの健康の知識を社員がお互いに教え合う慣行も広げています。まずレジリエンスプログラムに参加した管理職が部下にその知識を教え、続いて教わった社員が他の社員に教えていくのです。知識の定着のみならず、人の思いや情熱も伝わることでしょう。

 驚いたことに、プログラムに自身が参加したのではなく、互いに教え合う組織の慣行によって学んだNさん(女性)が、中心となってこれらの取り組みを推進していました。

 「全体を取りまとめる仕事は大変ですね」と私が声をかけた時、彼女は笑顔でこう答えました。

 「人が元気になっていくのが分かるので、むしろ仕事が楽しいです。1日の大半を過ごす仕事だから、職場のみんなには生き生きしてもらいたい。組織健康度調査の結果を囲み、チームがより良くなる方法を話し合って実行するプロセスはやりがいがあります」

 レジリエンスプログラムの参加者は、自分の職場でよくこのような活動を展開しています。しかしムービングでは、プログラム参加者だけでなく、互いに学び合う慣行を通じて社員の多くが4つの健康を実践し、変化や困難に強い組織をつくろうとしているのです。

 ムービング施設物流本部では従来、丸井の営業店館内の搬送業務を担っていました。それが最近では、他社の電子商取引(EC)関連業務など、新しい領域への挑戦と進化を要求されています。その中で社員は恐れることなく日々前向きに挑み続けています。

 組織の慣行は、働く喜びを高め、タフでしあわせな組織文化をつくるのです。