目的を「言葉」にする

 意識を浪費しないためには、他人の言葉の裏の意図ではなく「言ったこと」「書いたこと」に意識を集中できる構造をつくることがポイントです。最近、生産性の高い組織の特徴として「心理的安全性」(※3)が注目されています。ただ、もともと発言しない人が多い日本の文化では、安心して発言できる雰囲気をつくるだけでは不十分だと思います。

 言葉で意思を伝えることで回る仕組みを、意図的につくる必要があります。人は自ら述べた内容に自分自身をコミットさせる特性があります。言葉にして対話を重ねるほど、そのことを大事に思うようになるのです。

 自意識(自分がどう見られるか)については、モチベーション理論の大家ゲイリー・レイサムをはじめ多くの研究者が、目的と学習への意識の転換が必要と述べています。

 つまり意識のベクトルを自分(内)ではなく社会(外)の方に向け、「どんな社会にしたいか」「そのために自分は何ができるか」という目的意識に、そして「少しでも進歩するにはどうするか」という学習意識に転換するのです。企業のミッションに基づいた自分の意思表明を求められると、自然に意識を内ではなく外に向けられます。

手を挙げなければ始まらない

 丸井グループの特徴の1つに、何をするにも「自ら手を挙げる」ことが求められる社内の仕組みがあります。例えば、昇進・昇格も、チャレンジするための条件はありますが、本人が手を挙げ、自分の将来の願望や目的について意思を表明しなければ選抜対象にもなりません。

 社内プロジェクトや社外のビジネススクールなどの成長支援も同じです。企業ミッションを理解した上で、自分はそれに参加して何をしたいかという目的意識を小論文に書き、自ら意思を表明して初めて、選抜対象になります。

 「中期経営推進会議」もそうです(下の写真)。従来は幹部社員のみでしたが、今では手を挙げた新入社員も参加しています。裏を返せば、自分で目的意識を明確にして手を挙げなければ、何も始まらない仕組みなのです。

■「 手挙げ」式を取り入れたことで会議が活性化した
2008年当時の中期経営推進会
現在の中期経営推進会議
従来は幹部社員のみだった中期経営推進会議(上)は、全社員を対象とした「手挙げ」に基づく選抜方式にしてから活性化した。写真は2018年5月に撮影したもの(中、下)。
コロナ禍の現在はリアルとオンラインを併用して実施している
(写真:丸井グループ)

 これはまさしくニュートンの言葉「成功に必要なことをあえてひとつ述べるとすれば、それは『常に目標や願望について考える』ことに尽きると思います」という意識の使い方を導く文化だと、私は思います。

※3 「皆が気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる文化」のこと。『恐れのない組織(』A・C・エドモンドソン著)による定義