「失敗は学習のチャンス」ととらえる組織文化が根付いてくれば、何かあったときに誰かを非難するよりも、まず何が起こったのか、背景も含めて詳しく調査しようという意志が働き、組織の進化につながります。

■ 失敗を学びに変える組織とよくある組織の違い
■ 失敗を学びに変える組織とよくある組織の違い
何かミスが起きたとき、周囲は当事者を非難しがちだ。ミスをした本人も自己防衛をする。こうした人間の自然の反応を超える仕組みをつくることが、失敗から学び、成長を続ける組織になるために欠かせない
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ミスの報告を推奨する

 例えば、私が産業医をしている企業では、昔から棚卸し件数のミスや防ぐことができなかった万引きなどの事例を共有する「事故報告書」というシステムがありました。ただ、偶発的で小さなミスはわざわざ報告書を提出するまでもないとして現場関係者だけで把握するにとどまり、提出件数は多くなかったようです。

 あるとき、「事故報告書を積極的に提出して下さい。ミスや不備をスピーディーに報告して皆の学びにつなげ、改善対応をすればその非は問いません。しかし、もし事故報告をせずに、それに起因する重大インシデントが発生した場合、厳しく対処します」との旨が全社に伝えられました。

 すると事故報告書が積極的に提出されるようになり、進んでミスを開示し、他事業所の事例から学ぶ意識が少しずつ浸透してきたそうです。なお現在は、どの程度のミスなら提出が必要か、一定の基準を設けることで現場に過度の負担がかからないよう工夫もされています。

 また別の例として、管理職向けのプログラムでは困難や失敗事例から皆で学びを得る「事例検討会」を行っています。

 失敗にも種類はありますが、複雑さを増す社会では、一度も失敗せずにゴールに至るのは困難です。目的に向かって粘り強くやり遂げようとする者、実験や検証を繰り返す者、勇敢に批判を受け止めようとする者を称え、未来に向かって挑戦し続けられる組織文化を創る。それができる企業が、これからの社会を発展させていくのだと思います。

 最後に、マハトマ・ガンジーの言葉を紹介します。

 「もし過ちを犯す自由がないのなら、自由を持つ価値はない。
 - Freedom is not worth having if it does not include the freedom to make mistakes. -」