丸井グループは、役員と管理職を対象とした「レジリエンスプログラム」を実施しています。困難の中でも活力高く幸せな人と組織をつくるのが目的です。

 2020年からは、多様な職場のトップ層が共に適応的知性の発達に取り組むチーム活動を取り入れました。具体的には、メンバーが実際に直面した困難な状況を持ち回りで提示し、チーム全員で困難事例を疑似体験しながら互いに議論します。「事例検討会」という仕組み(慣行)で、月1回程のペースで実施しています。

 活動に参加したあるグループ会社の役員は言いました。

 「立場が上がると、色々な意味でだんだん孤独になってきます。それが、各々が今ぶつかっている課題や問題について、これほど率直に話し合える場があるのは、本当に貴重です」

丸井グループの「事例検討会」の様子。トップ層が実際に直面した困難な状況を持ち回りで提示する。多様なメンバー(職級は同じ)がそれを疑似体験しながら対話し、本質的な要素に気づき対応力を高めていく。検討会を繰り返すことで、胸襟を開いて課題を話し合う関係性も深まっていく<br><span class="fontSizeS">(写真:丸井グループ)</span>
丸井グループの「事例検討会」の様子。トップ層が実際に直面した困難な状況を持ち回りで提示する。多様なメンバー(職級は同じ)がそれを疑似体験しながら対話し、本質的な要素に気づき対応力を高めていく。検討会を繰り返すことで、胸襟を開いて課題を話し合う関係性も深まっていく<br><span class="fontSizeS">(写真:丸井グループ)</span>
丸井グループの「事例検討会」の様子。トップ層が実際に直面した困難な状況を持ち回りで提示する。多様なメンバー(職級は同じ)がそれを疑似体験しながら対話し、本質的な要素に気づき対応力を高めていく。検討会を繰り返すことで、胸襟を開いて課題を話し合う関係性も深まっていく
(写真:丸井グループ)

「痛み+内省=自己変容」

 別のグループ会社の役員はチーム対話の中で、他者の指摘に対して強く反発を感じた場面を振り返り、自分の価値観を変化させる必要があるのではないかと気づきました。

 「心の奥では、その指摘が本質を突いていたから、あれほど反発したのかもしれない」と自己分析し、そのことを「図星アングリー」とユーモアたっぷりに名付けました(ラベリング)。そして常日頃この言葉を意識して自分を戒めながら、自己変容に取り組んでいます。

 この例のように、人は特に感情やプライドに関して痛みがあった時に深く内省することを通じて、自己変容していきます。

 多様な思考や価値観に触れながら、自分の考えを客観的に振り返り(メタ認知)、それを変容させる必要があると気づく。そして、その課題に意識を集中することを繰り返しながら、人は適応的知性を発達させます。「痛み+内省=自己変容」が、適応的知性の発達の本質なのだと思います。

 適応的知性に関わる脳の部位(主に前頭前野皮質)を使って集中することによって、その領域に神経ネットワークの同調が起こります。これを繰り返すことで、既存の脳神経に、新たなネットワークを組み込んでいくのです。

 事例検討会では、自分だけでは経験しきれない頻度で困難を疑似体験します。中でも、事例を出す人は困難に直面した経験をさらけ出す痛みがあるものです。しかし、対話を通じて自己防衛を乗り越え、新たな洞察を得ることで、自分を変容させていけるのです。

 詩人のタゴールはこう言っています。「人間が自分の人生から学び取ることのできる最も重要な教訓は、この世に苦しみがあるということではなく、苦しみを活用するかどうかは我々次第であり、苦しみは喜びに変わるということである」。