人間は機械ではありません。特にその判断や振る舞いが大きな影響を及ぼす組織のリーダーが、食事を抜いたり、睡眠を削ったりするのは、自ら思考力や判断力を悪化させているようなもので、無責任とさえ思えます。

 米航空宇宙局(NASA)では、宇宙飛行士のパフォーマンスを高めるために血糖値をコントロールしています。そこから着想を得て、米グーグルが、仕事で最高のパフォーマンスを発揮できるよう、社員の血糖値をKPI(重要業績評価指標)に設定したことは話題になりました。

 丸井グループでも、リーダー層を対象とした「レジリエンスプログラム」で、適応的知性を高める戦略的な食べ方を所属長が学び、実践しています。そして所属長が、社員の創造性や集中力、他者への認知的な共感力を高めるために、プログラムで得た知識を部下に伝えています。

ポイントは「少量分散」

 自我消耗を防ぎ、最高のパフォーマンスを発揮するには、血糖値を乱高下させず一定の範囲内(およそ70~140mg/dl)に保つことが必要です。血糖値が低いと自我消耗になりますが、反対に高過ぎると眠気を催したり、糖尿病のリスクが増したりするのは周知の通りです。

 食べ方のコツを一言で言うと、「少量分散」です。少なめの3度の食事に加えて、数時間に1度食べます。いわゆるおやつを指す間食とは区別し、食事を補うという意味で「補食」と呼びます。補食によって血糖値を一定の範囲内に保つのです。

 補食は1回につき100~150kcalが目安。菓子パン3分の1個位のイメージです。運動をしているわけではないので、少ない量でよいのです。この少量のカロリーがパフォーマンスの質を保ちます。

 私は、重要な会議の前には、参加者に小さなおまんじゅうや、ナッツの小袋などを渡すようにしています。参加者が、自我消耗でイライラしたり、思考力が低下したりするのを防ぐためです。血糖値を乱高下させないことを考慮すると、補食としてはナッツや果物など、G I(Glycemic Index:血糖値に及ぼす影響の度合い)値が低い食べ物がよいでしょう。

 ただし、各食品による血糖値の反応の仕方には個人差があります。最近では、自分で簡単に血糖値を測れる機器をネット通販で手軽に購入できるようになりました。

 私も時々測定していますが、どんな物を食べると血糖値がどう推移するかが分かります。血糖値を一定に保つ生活上の工夫を試すこともできます。バイオフィードバック(生体反応の自己認識)によって、自分の体調を意識的にコントロールできるのでおすすめです。

 人の力が企業価値を生む源泉であるならば、プロのアスリートのように、もっと「人の能力が発揮される仕組み」を知って生かすことが必要ではないかと私は思います。