本連載でお話ししてきたサーキュラーエコノミー(CE)の5つのビジネスモデルを深く理解するため、各モデルを取り巻く現状の課題を論じた上で、先進的な取り組みをしている企業事例を紹介していきたいと思います(前回の記事から読む)。今回は「サーキュラー型のサプライチェーン」を取り上げます。

サステナブルな資源を戦略的に利用

 サーキュラー型のサプライチェーンは、再生可能資源、再生資源、リサイクル率の高い資源を生産工程に組み入れて使用することで、環境負荷や使い捨てによる無駄の削減を目指したビジネスモデルです。資源の再利用という意味では、日本でも多くの企業が既に取り組んでいるとも言えますが、実現に向けて重要になるのはどのような資源、素材を再利用していくかという戦略的視点です。サーキュラー型のサプライチェーンで利用される資源は大きく分けて以下の3つのグループに分類できます。

(1) 再生可能資源
自然に補充され、何度も使える資源。雨水または脱塩プロセスによって得られる水、風力、太陽エネルギー、余剰となった再生可能エネルギーから生産した水素燃料など

(2) 再生可能なバイオ素材
生物由来のバイオプラスチックや微生物農薬溶液などの素材

(3) 再生可能な人工素材
品質または物理的特性が大きく損なわれることなく何回でもリサイクルできる、人工的に作り出された素材

 企業がサーキュラー型のサプライチェーンを実践するためには、まずはこれらの資源を自社の事業に取り入れ、優先的に既存の原材料と置き換えていく必要があります。現在のところ、サーキュラー型のサプライチェーンの取り組みでは、再生もリサイクルもできない一方通行の原材料を上記のような環境への負荷が少ないものに置き換える動きが中心です。先進的な取り組みの1つとして、独自動車メーカーBMWの電気自動車「i3」を例にとり、同社の公開資料を基にご紹介しましょう。

 BMWが公開している資料によれば、同社が開発、販売をしている電気自動車「i3」では、植物由来原材料やリサイクル材を内装に活用し、95%がリサイクル可能な部材で製造されているなど、先進的なケースです。注目すべきは、原材料調達リスクの低減と軽量化という価値を創出しながら、環境負荷の低減というサステナブルな成果も実現していることです(下の図)。具体的に見ていきましょう。

<再生可能資源の活用>
生産拠点では再生可能エネルギーが活用されています。i3を生産するライプツィヒ工場で使用する電力は100%風力発電で賄われている他、使われている炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、100%水力発電で作られた電力で生産されていると紹介されています。

<再生可能なバイオ素材の活用>
石油由来のプラスチックに代わる素材として、麻の一種であるケナフが利用されています。このケナフを内装に多く取り入れることで、従来の素材に比べて最大30%もの軽量化が実現されています。さらに、ケナフは成長過程で一般的な植物に比べて多くのCO2を吸収して生育することでも知られています。

ダッシュボードには、湿気に強いユーカリ・ウッドが利用されています。この湿気に強いユーカリの特性を生かすことによって、通常使用されている木材と比べて、表面処理工程を約90%も削減することにつなげています。また、化学薬品を用いる工程を省くことで、環境負荷の低減にも寄与しています。

シートを覆うレザーの加工には、オリーブオイルの製造時に副産物として発生するオリーブ葉の抽出油が利用されていると発表されています。通常は廃棄される抽出油をなめし工程で用いて、レザー本来の柔らかさを損なわずに、しなやかな手触りと風合いを実現しています。

<再生可能な人工素材の活用>
内装で使われている素材はほぼ100%がリサイクルされたポリエステル製で、そのうち34%はペットボトルからのリサイクル素材が使われているなど、積極的なサーキュラー素材の活用が進んでいます。この素材はペットボトルを溶かして染色したのちに、繊維や糸へと加工され、見た目や手触りはもちろんのこと、耐久性にも優れた素材として活用されています。

■BMWは「サーキュラー素材」を積極的に活用
出所:アクセンチュア