グローバル規模での危機的な気候変動や資源不足、社会的・環境的な懸念の高まり、さらには技術の急速な進展など、我々を取り巻く状況が大きく変化する中、持続可能性(サステナビリティ)の実現は、もはや避けられない世界共通の重要テーマになっています。こうした課題意識を背景に日本でも近年、SDGs(持続可能な開発目標)に積極的に取り組む企業が増えています。しかし、従来のような大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済活動を見直さずして、これらの課題の根本的な解決は望めません。生産と消費の在り方を抜本的に変革し、持続可能な社会を実現していくための新たな成長モデルとして、現在注目されているのがサーキュラーエコノミー(以下CE)です。

「供給」視点から「利用」視点へ

 これまでの資源の調達から製造、消費、廃棄に至る「取って、作って、捨てる」という産業革命以来約260年間続いてきた一方通行型の経済に代わり、CEは資源をできる限り長期にわたって循環させながら利用することで、廃棄物などの無駄を富に変える循環型の経済モデルです。特徴として挙げられるのが、従来のような「供給」視点の長くて時間のかかるサイクルではなく、継続した「利用」を前提にモノや資産を短く早く循環させ、その潜在価値を最大限に高めることを目指している点です。これは、単に廃棄物・環境対策としての3R(リデュース、リユース、リサイクル)に代表されるような環境負荷低減に向けた取り組みにとどまりません。つまり、CEとはサステナビリティと利益創造を同時に実現しようという野心的な成長モデルなのです。

 アクセンチュアは、CEから生み出される経済効果は2030年までにグローバルで4.5兆ドル(約500兆円)に達すると試算しています。当初は欧州を中心に取り組みが先行していましたが、ここへきて日本でも産学官の枠を超えて急速に注目を集めるようになっています。アクセンチュアは2016年に『サーキュラー・エコノミー デジタル時代の成長戦略』(日本経済新聞出版)を刊行し、日本でもいち早くCEの紹介に努めてきました。私自身もこの間、コンサルタントとして日本の経営幹部の方々と様々な議論を重ねてきましたが、当時と比べても日本企業がCEをより深く理解し、自社の経営戦略に組み込もうと本腰を入れ始めていることを実感する機会が増えました。

企業の背中を押す3つの変化

 CEへの注目が高まっている背景には、3つの社会的変化が存在すると考えています。1つ目は、環境対応に関する社会的な関心の高まりです。例えば、海洋プラスチックごみの問題がセンセーショナルに取り上げられ、対策が後手に回っている企業を消費者がSNSなどで批判する動きが広がるなど、環境対応が企業の株価や業績、ひいては存続を左右しかねない時代になっています。2つ目に、消費者の志向の変化が挙げられます。これはシェアリングやサブスクリプションなどのサービスに代表されるように、消費者のニーズが「所有から利用」に移行している実態があります。3つ目は、「企業の在り方」に対する消費者や社会の視点の変化です。アクセンチュアでは「Responsible Business」というキーワードを使っていますが、社会課題が増大かつ複雑化するのに伴い、企業に対して社会的責任を求め、「社会課題の解決への貢献と自社のビジネスを両立させること」を評価する流れがより鮮明になっています。

 日本では江戸時代以降、「三方よし」に代表されるマルチステークホルダーに対する貢献が企業の存在意義として広く受け入れられてきました。CEは、社会的責任と事業成長の“いいとこ取り”を実現するための新たなアプローチとして、今後ますます実践に移す企業が増えることでしょう。