前回はサーキュラーエコノミー(CE)の概論について5つのモデルとともにご紹介しました。今回はより具体的に「食品ロス」「プラスチック廃棄物」「紙おむつ」の3つの社会課題を例に挙げながら現状を確認しつつ、CEの意義について考えてみたいと思います。

生産や物流で生まれている膨大な「無駄」

 農林水産省と環境省の公表資料によると、日本の食品廃棄量は年間で約2500万tです。これを可食部と非可食部に分けると、可食部が約600万tであるのに対し、非可食部は約1900万tと可食部の約3倍もの量に達します。可食部のみの数値だけを取り上げても、国連世界食糧計画(WFP)が難民などの人道支援のために提供している年間の食糧援助量(約320万t)の2倍に相当する量です。この他、価格を維持するための需給調整手段として収穫後に出荷されないまま廃棄される野菜・穀類・果実の量は年間約400万tにも上りますが、これらは上記の食品廃棄量には含まれていないのです(下の図)。

■ 食品ロス:国内におけるサプライチェーンごとの廃棄量
日本における食品廃棄量を絶対量で見ると製造業や家庭などで多く発生している。製造業での廃棄量のほとんどは非可食部で、可食部については外食産業の廃棄も目立つ
(出所: 農林水産省「食品循環資源の再生利用等実態調査」などを基にアクセンチュア作成)
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 さらには、こうした生産段階で発生するロスに加え、需給の調整のために物流段階で発生する食品ロスも存在します。特に商品寿命が短い生鮮食品を多く扱う外食産業や小売業では、発注担当者による属人的な発注に頼っているケースが少なくなく、天候不順などの外部要因により多量の廃棄が生じることもあります。しかし、例えばAI(人工知能)を活用し、スーパーや飲食店での需要を精緻に予測したり、物流プロセスなどをより最適化したりできれば、食品ロスの削減だけでなく、経済的にも大きなメリットが見込まれます。このようにCEへの移行を加速させる上では先端テクノロジーをうまく活用しながら、無駄をなくす取り組みが有効な選択肢と言えるでしょう。

課題はコストと消費者の価値観

 次にペットボトルなどのプラスチック廃棄物(廃プラ)を取り巻く現状を考えてみましょう。ご存知のとおり、廃プラによる海洋汚染は世界的な社会問題となっていますが、ペットボトルなどのプラスチック容器包装は生産量が多く、製造過程でCO2も多く排出するという課題を抱えています。

 ただ、これらを解決する方法は既にいくつか存在し、技術的には可能になりつつあります。例えば、石油由来の原料から環境負荷の低い生物由来の原料に切り替えれば、CO2排出量の削減につながります。これは前回ご紹介した5つのビジネスモデルのうち、「サーキュラー型のサプライチェーン」のモデルに合致します。さらに、「回収とリサイクル」のモデルとして説明したように、廃棄されたペットボトルを回収、粉砕し、品質を保ちながら再びペットボトルに戻す取り組みも進んでいます。廃プラからプリフォーム(ペットボトルの原型)を作成する技術は既に実用化されているのです。

 しかし、ここで問題となるのが経済合理性、つまりは投資に見合う効果を得られるかどうかという経営上の判断が関わってきます。CEへの移行が新たな社会的価値を生んだとしても、企業が採算を度外視して推進するのはサステナブルとは言えません。