2021年がスタートしました。新型コロナウイルス感染症が世界でいまだ猛威を振るっている一方で、米国でバイデン新政権が発足したほか、英国のEU離脱など新しい節目となる1年になりそうです。前回の記事でもお伝えしたとおり、「ニューノーマル(新常態)」と呼ばれる社会・経済において、サステナビリティとその実現のためのガバナンスを整えることが、経済活動のメインストリーム(主流)に台頭してくるでしょう。

投資家の役割は今すぐRE100や1.5℃目標を要請することではない

三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経営企画部 副部長 プリンシパル・サステナビリティ・ストラテジスト 吉高 まり 氏(写真:清水 盟貴)

 さて今回は、ESG投資家は気候変動問題の解決のために、何ができるのかについて取り上げます。

 年金基金や保険会社など巨額の資産を保有する資産保有者(アセットオーナー)や、それらから運用を受託する資産運用会社(アセットマネジャー)は、運用のパフォーマンスを上げることが資産を預けていただいている顧客に対しての責務です。そうした本来の役割をまっとうしながら、気候変動問題を巡って機関投資家ができることは何でしょうか。

 投融資先の企業に対し、事業の脱炭素化や、再エネ電力のみを使って事業を行う「RE100」の宣言を求めたり、「1.5℃目標」や「カーボンニュートラル目標」を即座に実践したりするようにプレッシャーをかけることでしょうか。確かに世界には、そういった取り組みを資産運用会社に求めるアセットオーナーもいます。

 19年9月に国連環境計画金融イニシアチブ(UNEP-FI)とPRIが設立したNet-Zero Asset Owner Allianceは、50年までに温室効果ガス排出量ネット・ゼロのポートフォリオへの移行を目指す33の機関投資家(運用資産総額5兆1000億ドル)が参加しています。しかし、日本のように、自家発電や熱利用による多排出企業の削減コストや、再エネ電力のコストが十分に安くなっていないなど、大幅な温室効果ガスの削減や脱炭素化を実現する手段のコストが高い国で、そういった要請をどのような業種の企業に対しても同様のシナリオで求めるのは、投資の戦略としても現実的ではないでしょう。

 むしろ今、金融機関が採るべき行動のなかでも「トランジションファイナンス」、すなわち「早期に低炭素化や脱炭素化をしづらい企業に資金を回し評価していくことで、取り組みを促し、加速させること」が期待されており、21年に取り組みが拡大すると見られています。

 脱炭素型のビジネスや経済の実現に向けて、企業などが変化していくことを「トランジション(移行)」と呼びます。これを起こすための金融セクターによる投融資が「トランジションファイナンス」です。機関投資家による気候変動対策のための行動としても、重要ではないかと考えます。