グローバルな課題として注目されている気候変動については、企業も、ESGのEの課題の中でも優先的に開示を充実させることが重要です。日本の約3800社に及ぶ上場企業は、気候変動に関する情報を把握し開示していかなければ、今後、世界でいっそう拡大するとみられる「サステナブルファイナンス」による投融資対象企業としてのスタートラインに立てません。

 サステナブルファイナンスはあらゆる業界が対象となります。サステナビリティ報告書や統合報告書、アニュアルリポート、有価証券報告書などで、投資家は気候変動への方針を示してほしいと期待しています。コストや人件費がかかると思われるかもしれませんが、将来への投資としてとらえてほしいと思うのです。

どのような企業も情報開示が必要に

 CO2排出が小さい企業でも、気候変動によって異常気象が激甚化している今、影響を受けない業界はありません。気象災害が生じるような場合の経営の耐性、そのリスクに対する考え、リスクを抑えリターンにつなげる戦略を投資家は知りたいのです。

 それでも、気候変動に関わる戦略策定や情報開示の必要性を感じにくい企業もあるでしょう。とはいえ、将来的にはどのような企業も、投資家や金融機関から、定量的な温室効果ガス排出量の情報開示が求められるようになりそうです。

 なぜなら、TCFDは投資家や金融機関に対し、投融資先の、サプライチェーンも含めた全体の温室効果ガス排出量を把握することを求めています。上場、非上場、国内外、経営規模は関係ありません。そしてフランスや英国、中国などで、投資家や金融機関にTCFD提言にのっとった情報開示を義務付けることが検討されています。持続可能性に配慮した投資を求める「責任投資原則(PRI)」に署名した約3000の投資家は、TCFD提言に基づく情報開示を始めています。日本でも投資家や金融機関が今後、アセット全体の排出量の開示に着手していくことになります。

 そうはいっても、温室効果ガス排出量の把握や戦略の策定はハードルが高いと捉えている企業も多くあるでしょう。それでも、経営者が気候変動に対する考えや戦略をはっきりと示すことがまずは大事であると考えます。経営者が事業を通じて気候変動に対応していくのだという経営方針を示せば、社内でも排出量の算定に必要となる活動量の情報を集めやすくなります。

 国が50年のカーボンニュートラル(CO2などの温室効果ガス排出量の実質ゼロ)を宣言したことで、日本のどのような組織も、同様にカーボンニュートラルになっていくことになります。気候変動対策は排出量の多い大手企業だけが取り組むことではありません。どのような企業も事業活動によってCO2を排出します。プラスチック容器、食肉の生産、気候変動に一切、関わりがない企業はありませんし、すべての活動の排出量を計算することができます(カーボンフットプリントの算出を指南する一般社団法人サステナブル経営推進機構のウェブサイト)。

 いずれ投資家や金融機関から情報開示が求められるようになるのですから、企業としては早めにガバナンス体制を固めることから着手しておくのが良いでしょう。