前回は、ESG投資家が評価する企業の情報開示、中でも気候変動に関わる情報開示について紹介しました。ただ、単に戦略や目標といった情報を開示するだけでなく、実際にどのような取り組みが進んでいるかが重要であることは言うまでもありません。今回は、ESG投資家の要請を基に、企業の気候変動についてどのような取り組みを加速させているかを紹介します。

 先進的な事例としてまず紹介したいのが、日立製作所です。自社の事業(オフィス、工場など)からの温室効果ガスの排出を2030年までにカーボンニュートラルにする目標を明らかにしており、有価証券報告書にも明記しています。国が50年に目指すカーボンニュートラルの実現を、前倒しで目指す内容です。

 これは企業としての体質強化を強く意識した環境対策、「G(ガバナンス)」に近い「E(環境)」の戦略ともいえるでしょう。菅政権がカーボンニュートラルを宣言し世界ががらりと変わっていくという将来像を、経営者も認識しているということにほかならないでしょう。

「カーボンニュートラル」をビジネスチャンスとして伝える

 リコーも、移行リスクや物理的リスクの評価とその対応、再生可能エネルギーの利用拡大などについて有価証券報告書に情報を開示しています。

 海外でも、例えば米マイクロソフトが30年にカーボンニュートラルを目指すと宣言しています。エネルギー消費量の多くを電力の利用が占める電機・電子業界は、カーボンニュートラルに向けた取り組みをビジネスチャンスとしてESG投資家に伝える事例が他業界と比べて一歩進んでいる傾向がみられます。

 他にも様々な企業が、気候変動のリスクや対応のための戦略を有価証券報告書において示しています(表)。これは、投資家に対するエンゲージメントの意思の表れとなります。ここで企業に念頭に置いていてほしいことは、単に高い目標を掲げればよいのではない、ということです。

■有価証券報告書で気候変動について言及している事例
出所:各社の有価証券報告書を基に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが作成

 それではどのような取り組みを進める必要があるでしょうか。資産運用会社が気候リスクに強い資産ポートフォリオを実現するため、CO2排出量などを基に企業を評価する様々なベンチマークを開発しています。このような機関投資家の関心や情報収集に応える取り組みや情報開示が必要になっています。