金融機関に次いで、今後、脱炭素に向かう取り組みが一層進みそうなのが商社です。

 商社による開示情報のうちTCFDの提言に基づく情報を参照してみると、各社の化石資源に関する方針と取り組みに、特徴や差があることが分かります。なかでも事業ポートフォリオにおける化石資源に関わるビジネスの位置づけが、気候変動に関わる取り組みの違いを生んでいると見られます。

 詳しい情報開示をしているのが丸紅です。業界でも先手を打って再生可能エネルギーへの投資を進めており、また、水素エネルギーへの投資をしており、脱炭素に取り組む足場固めが進んでいるように見受けられます。化石資源に関わるビジネスに関しても、石炭火力発電事業によるネット発電容量を、2018年度末の見通しの約3GW(約300万kW)から25年までに半減させるといった方針を示しています。

 また、30年に向けたアクションプランを示しており、50年温室効果ガス排出ネットゼロに向けたスコープ1、2、3における削減目標を開示しています。スコープ3の開示には、TCFDが開示を求めている「投資先からの温室効果ガス排出量」(カテゴリ15)も含めている点が特に評価されるでしょう。

 三井物産も発電事業において、同社の持分容量における石炭火力の比率を段階的に引き下げることを明示しています。三井物産は有価証券報告書でも、TCFDに関する開示を充実させています。また、三菱商事も、30年度までに再生可能エネルギーを6割超に増やすとともに、石炭火力は段階的に減らして50年までにゼロにすると発表しました。

 これらの企業の例のように、化石資源に関わるビジネスを今後どのように転換していくかという見通しを示すことのできる企業は積極的に開示することで、今後、ESG投資家の評価につながっていくと見られます。

投資家は化石資源ビジネスのリスクを注視している

 化石資源ビジネスを転換や縮小していく見通しが明確でなかったり、「転換を目指す」などのように弱い表現にとどまっていたりする企業の姿勢は、ESG投資家もTCFDの情報開示から読み取ることができます。仮に大きなリターンを得られる見込みのある事業を展開している企業でも、化石資源ビジネスの転換や、脱炭素に向かおうとするトランジション(移行)の方針が明確ではない場合、ESG投資家は気候変動に関してリターンを得られるオポチュニティ(機会)よりもリスクに引っ張られて評価せざるを得ない傾向があると見られます。いま、気候変動対策を進展させようという国際社会の要請が大変強いことから、いくら再生可能エネルギーや電気自動車(EV)といったビジネスでリターンが得られる見込みであっても、化石資源ビジネスも同時に手掛けているようならばリスクの方が上回ってしまいます。

 金融機関や商社が、脱炭素方針の策定を進めたり、その情報開示を充実させたりしているのは、こうしたESG投資家の動向も背景にあると見られます。