米国、そして欧州でも、多くの機関投資家が、企業は株主のものであるとする「株主資本主義」を標ぼうし、投資先に対して株主の利益を減らすコストとなる取り組みには「ノー」と反意を突き付けてきました。

 ただ、欧米には多様な立場・主義の機関投資家がいます。なかにはキリスト教に基づくフィランソロピー(社会貢献活動)に取り組む意識が非常に高く、その意識と合致する投資先を選定するアセットオーナー(資産保有者)もいるのです。

 その始まりをひも解けば、1920年代、キリスト教教会の教会資金の運用に際して、聖書の教義に反するタバコやギャンブルなどの中毒性のあるもの、兵器産業への投資を禁じたこととされます。その後、60~70年代にかけて人権などといった社会問題や公害などの環境問題に対応する企業の評価などを考慮し、その評価によっては投資を引き揚げる投資手法が生まれ、採用されるようになりました。

 こうした社会や環境の課題に配慮した投資を行う投資家が、今、気候変動の影響とみられる気象災害にも危機感を抱いています。

欧米で高まる気候変動への危機感

 日本は毎年のように大小さまざまな台風が到来するほか、干ばつや洪水などの気象災害に長年にわたって見舞われてきた経緯があります。一方、米国や欧州では、日本ほど自然災害の経験がなかったこともあって、近年、急に欧米でも頻発するようになったハリケーンや熱波といった気象災害への危機感が、日本以上に高まっています。

 世界の政治・経済界の指導者が参加する世界経済フォーラム(WEF)は毎年、年次総会(ダボス会議)の開催に際して世界がその年に直面するリスクをまとめた「グローバルリスク報告書」を発表しています。これによれば、2015年には「国家間紛争」などの地政学リスクが上位を占めいていたのに対し、2020年には「異常気象」「気候変動対策の失敗」といった環境にかかわるリスクが上位を占めました。政界と経済界の、気候変動に対する危機意識の高まりを如実に表しています。

 そして実際に、気象災害を気候変動が顕在化していることによるものと捉え、機関投資家や金融機関がそのリスクについて投融資にも反映させるようになりました。

 この背景には理念上のモチベーションもありますが、実務的な理由もあります。ここでは大きく3つ取り上げます。1つ目は、投資先企業の「レピュテーションリスク(評判リスク)」を考慮することで資産価値低下のリスクを減じるため。2つ目は、各国が低金利政策を取る中、ESGにより確実なリターンを求める投融資が増加していること、そして3つ目に、気象災害による保険金の支払いが世界的に増大していることです。

■世界経済フォーラムが毎年公表する「グローバルリスク」
異常気象や気候変動に関する危機感が高まっている
(出所:世界経済フォーラム「第15回グローバルリスク報告書2020年版」を基に三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成)
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