例えば、温室効果ガス排出の「原単位」を基に、気候変動リスクを抑えながら成長できる企業かどうかを評価しているケースもあります。

 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がベンチマークにするESG指数の1つである「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数シリーズ」は、同業種内で「炭素効率性」が高い企業と、温室効果ガス排出に関する情報を開示している企業の投資ウエイト(比重)を高めています。「炭素効率性が高い企業」とは、その企業の温室効果ガス排出量を売上高で割った値、いわゆる「売上高当たりの排出原単位」がより小さい企業のことです。GPIFは、より少ない温室効果ガス排出量で成長している企業、つまり資本コスト効率の高い企業を評価していると言えます。

 また、GPIFの特徴は、巨額の運用資産を市場全体に幅広く分散して運用する「ユニバーサルオーナー」であり、かつ世代を超えた「超長期投資家」であることです。そのため、化石資源関連の業種など環境負荷の大きい企業について形式的に銘柄除外を行う「ダイベストメント(投資引き揚げ)」はGPIFの方針に合致しないとして採用していません。

 S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数シリーズでは、国内株は「S&P/JPX カーボン・エフィシェント指数」、外国株は「S&P グローバル大中型株カーボン・エフィシェント指数(除く日本)」を採用しています。GPIFのレポートによると、後者の「グローバル大中型株」には温室効果ガス排出量の大きいエネルギー業界や素材産業が含まれています。このことからも、その業種の排出量が多いか少ないかが投資判断につながっているわけではないことが分かるでしょう。

 数兆円や数十兆円という大きな資産を保有するアセットオーナーは、ほとんどの上場企業の株式を保有することになります。ただ、ポートフォリオ内でどのような企業にウエイトを置くかを工夫することで、運用のパフォーマンス(成績)を上げようとします。この時、多くの場合、重視されるのは、同一業種内での企業間の相対評価です。例えば、炭素効率性は、グローバルの同一業種内で企業ごとに横並びで気候リスクへのレジリエンス(耐性)を比較するのに、使いやすい指標と言えます。

「カーボンプライス」は投資家が利用しやすい指標

 炭素効率性のように、投資先となる同業種の企業間で比較できる指標を機関投資家は求めています。その点では炭素効率性を金額で定量的に把握できる「カーボンプライシング(炭素価格、炭素排出への価格付け)」も、機関投資家にとって使いやすい指標です。