具体的には、ものづくりにどれだけのCO2排出コストがかかるのかや、1tのCO2排出削減の「限界コスト」がいくらなのか、それが企業の財務にどの程度のインパクトを与えるのかといった情報を、企業が積極的に開示していくことを求めています。投融資先企業の限界コストを把握できれば、機関投資家は企業価値を定量的により適切に評価できるようになります。

 例えばドイツのシーメンスは30年のカーボンニュートラルを宣言し、英国とブラジルの2つの拠点で、炭素価格のパイロットプロジェクトを実施しています。シーメンスUKは、社内のガスや車両用燃料の利用に対して炭素価格を課金し、削減を促しています。導入当初は1t-CO2当たり13ポンドだった炭素価格は現在、31ポンドになっていると同社は公表しています。

 「炭素排出への価格付け」は、一般的には、企業の温室効果ガス排出に課金することで排出量の多い製品・技術やビジネスモデルを経済的に不利にし、排出量の少ない低炭素型や脱炭素型の製品・技術やビジネスモデルのリスクを相対的に減らせると期待される仕組みです。

 下の図のようにカーボンプライシングには、「排出量取引制度」や「炭素税」のように政策によって導入されるもののほか、企業が独自に排出量に課金する単価を定め、事業部に排出量に応じて課金することで社内の排出削減に利用する「インターナルカーボンプライシング(社内炭素価格)」などがあります。社内炭素価格には、企業が投資計画や事業計画を策定する際に、便宜上用いられる「シャドウカーボンプライス」もあります。このようなカーボンプライスで企業の価値を測る指数なども作られるでしょう。

■ カーボンプライシングの様々な手法
出所:経済産業省「長期地球温暖化対策プラットフォーム報告書」
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 TCFDに基づく提言では、金融機関や機関投資家といった金融セクターは、投資ポートフォリオが気候変動によってどのような財務インパクトがあるかを把握することを求めています。そのため、投融資を受ける企業も、金融セクターから、移行や物理的なリスク・機会を金額で評価し、情報開示することが今後、いっそう求められていくようになるでしょう。