航空機を環境に優しい輸送手段にしないと生き残れないという危機意識の下、ANAではこれまでにも燃費性能に優れた機材を導入したりして、輸送効率を上げてCO2削減につなげるなど様々な取り組みを行ってきた。

 政府の50年カーボンニュートラル宣言を受けて、21年4月に気候変動への対応を中心に「2050年長期環境目標」を更新した。

 12年に策定した中期環境計画「ANA FLY ECO 2020」(2012~20年)で掲げた「20年度にCO2排出量を05年度比20%削減」や、20年7月に発表した「50年までに航空機の運航におけるCO2排出量50%削減(05年比)」という環境目標を大きく更新した。

 具体的には50年までに「航空機の運航で発生するCO2排出量(総量)を実質ゼロ」「航空機の運航以外で発生するCO2排出量を実質ゼロ」「プラスチック、紙などの資源類の廃棄率をゼロ」「機内食などの食品廃棄率を50%削減(19年度比)」という4つの目標を立てている。

■ 4つのマテリアリティと中長期目標
■ 4つのマテリアリティと中長期目標
ANAが策定した「4つの重要課題」とESGの取り組みから作成
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SAF活用などで負荷低減

ESG経営を進めていく上で、取り組み内容を発信していくため「ANA Future Promise 」のスローガンとロゴを策定した
ESG経営を進めていく上で、取り組み内容を発信していくため「ANA Future Promise 」のスローガンとロゴを策定した

 CO2排出量削減のために力を入れているのが、SAF(SustainableAviation Fuel、持続可能な航空燃料)の活用だ。SAFは原材料の生産・収集から燃焼の過程で、CO2排出量が少ない持続可能な供給源から製造される環境貢献価値が高いジェット燃料を指す。

 出資するバイオベンチャー企業のユーグレナなどに対して、国産SAFとして生物由来の燃料製造を支援する。さらに東芝や東洋エンジニアリング、出光興産などとも共同で、排ガスなどからのCO2をSAFに再利用するカーボンリサイクルビジネスモデルの検討なども進める。

 SAFを扱う米ランザテックやフィンランドのジェット機燃料製造会社ネステと提携してCO2排出量を削減できる燃料調達も進め、20年には日本の空港を出発する定期便として初めてSAF使用フライトも実現した。SAFのサプライチェーンを構築して定期便で使用も進める。

 航空機の運行については上昇中の「早期加速上昇」や、着陸時の「地上走行時の片側エンジン停止」「逆噴射抑制」を重点施策としてCO2排出量の削減を進めている。燃焼効率向上のための定期的なエンジン洗浄や、最適な高度・速度・経路の選定による飛行計画の作成度、環境に優しいオペレーションを実施するなど、地道な改善に取り組んでいる。

ESG推進を内外に伝える

 環境をはじめとしたESGの活動を分かりやすく伝えるために設定したのが「ANA Future Promise」のスローガンとロゴだ。「これまでにも人権報告書や統合報告書などでESGの取り組みを開示してきたが、航空機を使う旅客などに様々な場面で施策を訴求し、共感してもらいたい」と、ANAホールディングス執行役員、サステナビリティ推進部長の宮田千夏子氏は話す。