中島 肇 氏(写真:中島 正之)

 キリングループは、これまで取り組んできたCSR(企業の社会的責任)の考え方を一歩進めて、社会課題の解決と企業の成長を両立させるCSV(共有価値の創造)を経営の基本に据えている。

 2013年にキリンビール、キリンビバレッジ、そしてメルシャンの国内総合飲料事業を統括するキリン株式会社を立ち上げたのを機に、その中に「CSV本部」を設置した。CSV本部のミッションは、R&D本部など様々なセクションと連携しながら、商品やサービスを通じて社会の課題解決に挑戦することだ。まだ試行錯誤の段階だが、2014年は目に見える形で成果を出したい。

 これまでにもCSVの観点で開発した商品はある。2009年に発売した世界初のアルコール度数0.00%のビールテイスト飲料「キリン フリー」だ。飲酒運転による悲惨な事故が絶えず、事業を通じて何とか問題解決に貢献できないかと考えそれまでなかったアルコールが完全にゼロの商品を開発した。技術的なハードルは高かったが、問題ときちんと向き合うことを選んだ。

CSVは商いの本質

 その結果、商品は市場に受け入れられ、これまで運転で飲めなかったお客様と新しい接点を持つことができるようになり、会社の成長につながった。こうした経験から、お客様や社会の困り事に丁寧に応えていけば、会社の持続可能な成長に結び付くのだという意識が社内に浸透していった。考えてみればこれは商いの本質そのものだ。

 CSRのように「『責任』を果たさなければ」と考えるより、「お客様や社会に喜んでもらえる『価値』を提供していこう」と考える方が、発想が広がりやすいし、一般の社員にも理解しやすい。実際、社内のいろいろな場所から事業や活動のアイデアが出てくるようになってきた。

 従来よりも踏み込んだ、ステークホルダーとの共同作業も始めている。「午後の紅茶」の茶葉を生産しているスリランカに社員を派遣し、調達先の農園が、持続可能な農法を認証する「レインフォレスト・アライアンス認証」を取得できるよう支援している。2014年はこうした動きをさらに加速させていく。