聞き手/谷口 徹也(日経エコロジー編集長)

長年、アルコール問題での貢献活動に携わった後、部長職に。社会的課題の解決からブランドイメージ向上を目指す。

小沼 克年(こぬま・かつとし)
アサヒビール 社会環境部 部長
1960年埼玉県生まれ。86年東京大学大学院教育学研究科修了、アサヒビール入社。生産企画部、品質保証部などを経て、2010年社会環境推進部担当部長兼アサヒグループCSR委員会事務局長、2013年3月から現職

 アルコール飲料を扱うメーカーには、CSR(企業の社会的責任)として独特のテーマがある。若年層や妊婦の飲酒問題や、依存症への対応、飲酒運転といった負の側面を取り除くための取り組みである。この担当者として2005年から長年、関連業務に携わり、2013年に社会環境部の部長に昇進した。

 お酒は、付き合い方で薬にも害にもなり得る商品である。「健全なお酒の文化を築くために、メーカーの責任は重い。普段は同業他社と市場で激しく競争しているが、このテーマは別。お互いに協調して課題解決に取り組んでいる」と語る。

 海外メーカーなどとの連携も進んでおり、課題や解決策を共有するための国際会議も定期的に開催されている。アルコール問題を担当し、社外への啓発活動に取り組んでいた時期には、国際会議にもよく出席していた。

 途上国では、原材料に付着した農薬や、密造酒による健康被害など、日本では、もはや考えられないような課題が出てくる。国情がからむ問題だけに、直接、参加できる活動には限りがあるが、資金提供などで日本メーカーも貢献している。とはいえ「日本のメーカーも事業の国際化を進めているから、他人事ではない。このテーマへの取り組みで積極姿勢を示すことは、新興市場でのブランドイメージ確立という先行投資的な意味合いもある」と語る。

 環境/CSR全般を見る部長になったときは、自身の環境意識と仕事内容の乖離にとまどったという。私生活ではごみの分別もあまり積極的ではなかったそうで、自分で務まるだろうかと自問自答する気持ちが強かったと振り返る。ただ、この仕事に携わったことによって自ずと環境意識も高まってきた。今は企業活動をいかに社会への貢献活動につなげるかを考える日々だ。

 「社会貢献の活動は、社会を良くすることや、人のためになることを出発点に考える。それを実現して初めて、企業イメージの向上につながる。社会環境部はそれを先導する存在になりたい」と語る。

 大学、大学院時代は、学校に残って研究者を目指していた学究肌。しかし、途中で「自分には研究者に必要な問題意識が薄いことを感じた」ことから、就職の道を選んだ。常に自省の気持ちを忘れず、熟慮の末、突破口を見いだすのが持ち味なのかもしれない。

 現在は、取り組む課題としてエネルギーや食料の問題を重視している。熟考はお手の物。次は、どんな施策を打ち出してくれるだろうか。