聞き手/外薗 祐理子

環境配慮型の高価格帯住宅を積極的に拡販する戦略が好調な業績を支える。高付加価値化の決め手は、環境技術というよりも新しい「暮らし方」だと語る。

――2013年4月、ネット・ゼロエネルギー・ハウス(ZEH)「グリーンファースト ゼロ」を発売しました。売れ行きはいかがですか。

阿部 俊則(あべ・としのり)
積水ハウス代表取締役社長兼COO
1951年宮城県生まれ。75年東北学院大学文学部卒業、積水ハウス入社。東京営業本部長などを経て、2006年から取締役、2008年から現職
写真/今 紀之

阿部俊則氏(以下、敬称略) 発電や省エネルギーなどを推進し、住宅内のエネルギー消費を正味ゼロにするZEHを、国は2020年までに標準住宅とする方針を掲げています。住宅のトップメーカーとして、国の方針を先取りしなくてはならないとの気概で取り組んでいます。

 1999年に「次世代省エネ基準」が定められました。2003年に大手住宅メーカーで初めて、すべての戸建て住宅商品でこの基準を満たすようにしました。当時と方針は同じです。

 「グリーンファースト ゼロ」は期初に新築戸建て住宅販売の4割という売り上げ目標を掲げましたが、おかげさまで途中で5割に引き上げました。2014年度は6割に高めたいと思っています。

――1999年に「環境未来宣言」を出しました。環境先進企業というイメージがあります。

住宅内のエネルギー収支をゼロにする「グリーンファースト ゼロ」。太陽光発電パネルや燃料電池で創エネする

阿部 環境には真剣に取り組んできました。2002年には全工場でのゼロエミッションを達成しました。ほかにも木材調達ガイドラインの制定、リサイクル建材の開発なども進めてきました。2005年に「サステナビリティ宣言」を出し、2008年には環境省から「エコ・ファースト企業」の認定を受けました。ただし、当時は環境に力を入れたところで、あまり商売になりませんでした。

 2008年のリーマンショック後、住宅需要は極端に落ち込みました。工場の生産改革など様々な構造改革に取り組む一方で、2009年に発売した環境配慮型住宅「グリーンファースト」を積極的に拡販し、成長の牽引役とする戦略を実行しました。グリーンファーストは、太陽光発電システムや燃料電池を搭載し、一般的な木造住宅と比べて居住時のCO2排出量を6~9割削減できます。

――2014年1月期の連結純利益は770億円と過去最高の見通しで、環境配慮型の住宅が支えています。

阿部 現在、グリーンファーストは当社の新築戸建て住宅の85%を占めます。当社の新築戸建て住宅の価格は1棟当たり全国平均で3415万円です。東京都内では1棟当たりの平均で5000万円を超えています。業界ではかなり高額な水準でしょう。

「グリーンファースト ゼロ」ではアルゴンガスを封入した複層ガラスを採用し、断熱性能をさらに高めた

 グリーンファースト ゼロが売れているのは、グリーンファーストの環境性能がそもそも高いため、ZEHにする差額が小さいからなのです。ZEHの装備を一から付ければ普通は500万円かかると言われます。「ゼロ」では、空気よりも熱を伝えにくいアルゴンガスを封入した複層ガラスを採用し、業界で初めてHEMS(家庭用エネルギー管理システム)を標準搭載しましたが、既に太陽光発電システムも燃料電池もグリーンファーストに付いているため、差額は260万円程度で済みます。