谷口 徹也(日経エコロジー編集長)

「入社3年で寿退社」のつもりが、女性管理職第1号に。社内報の編集長など広報の経験を生かしCSR活動を改革する。

菊地 美佐子(きくち・みさこ)
1961年千葉県生まれ。84年早稲田大学第一文学部卒業、三井物産入社。鉄鉱石部、広報部を経て、2001年広報部編集制作室長、2006年CSR推進部コーポレートブランド戦略室長、2009年6月CSR推進部地球環境室長(改組により現職)

 「地球」の文字を冠する部署名はいかめしい。だが、それを率いる女性リーダーが重視しているのは「社内外との密なコミュニケーション」である。社内の経歴を聞くと、その発想の原点が分かった気がした。

 入社直後の配属は鉄鉱石部。日本船籍の輸送船を使って、オーストラリアの原材料を中国の顧客に売るようなグローバルな仕事である。体育会系の営業職場で鍛えられたのは本望。学生時代に米国での短期留学を経験し、「仕事をするなら世界を股にかけて」と思ったのが商社を志望する動機だったからだ。

 ただし、三井物産で長く勤めるつもりはなかったと打ち明ける。女性社員は一般職での採用が大半で、自身も例外ではなかったからだ。「3年くらい勤めたら寿退社して」という将来イメージが頭に浮かんでいた。

 だが、入社4年目に転機が訪れる。当時の上司の計らいで広報部門に異動したのだ。社歴や性別に関係なく、一人ひとりが責任ある仕事を任される職場。自身も20代で社内報の編集長になり、隔月刊ながら100ページを超す誌面作りを取り仕切った。毎朝放映する社内テレビのキャスターを務めたこともあり、役員や幹部への突撃取材もお手の物。「幅広い商社の事業を俯瞰できることが楽しかった」と振り返る。

 2006年の創業130周年記念行事では、広報部をいったん離れ、CSR推進部コーポレートブランド戦略室長として任に当たった。「三井物産らしさ」を伝えることを意図した企業広告の展開を企画。これらを含めれば、20年以上の経験を持つ生粋の広報ウーマンといえる。そして、寿退社どころか、現在社内に67人いる女性管理職の第1号にもなった。

 現在の役職に就いて、環境対応やCSR(企業の社会的責任)に本格的に取り組み始めたのが2009年である。グループ会社まで範囲を広げて、リスクを環境や社会問題などの側面から監査する重要な役割を担う。「最初は、大気汚染や水、廃棄物などへの対策といった仕事が多く、ISO14001の事務局のようだった。しかし、それから5年間ほどで、扱うテーマは人権や、NGO(非政府組織)との連携、途上国の先住民との対応など社会的な側面へと急速に拡大した」と感慨深げに語る。

 今春は、準備に1年間以上をかけた環境・社会貢献部のウェブサイトをリニューアルした。これまでは羅列的な活動紹介だったが、重視するテーマごとに分かりやすくくくり直したのが特徴だ。「伝える大切さ」をモットーに、新たな仕組み作りに思いを巡らせている。