谷口 徹也(日経エコロジー編集長)

タクシー運転手時代にお客として乗せた前社長の招きで入社。広告宣伝中心に経験を積み、今はCSR活動の司令塔となる。

代島 裕世(だいしま・ひろつぐ)
サラヤ 取締役 マーケティング本部本部長 兼 コンシューマー事業本部副本部長
1965年埼玉県生まれ。89年早稲田大学第一文学部卒業。雑誌編集、ドキュメンタリー映画の制作、タクシー運転手などを経験した後、95年サラヤ入社。商品企画、広告宣伝、広報、マーケティングを担当。2013年11月から現職

 失礼ながら、どうしても「元タクシー運転手」という経歴に目が行ってしまう。まして、たまたまお客として乗せたサラヤの創業者である更家章太・前社長から直々にスカウトされたと聞けば、なおさらだ。

 両者をつないだものを一言で表現すれば「創造性」だろう。様々な事情で職を転々としていた時期、実は一貫して実兄が営むドキュメンタリー映像の制作会社のディレクターを兼務していた。一方、サラヤは植物性のパーム油を原料として使い、排出された後も川などの環境汚染につながりにくい「ヤシノミ洗剤」をいかに消費者にアピールするかに頭を悩ませていた。タクシーの中でそんな仕事の話をしているうちに、創業者から「だったら、うちに来て広告をやってみないか」と誘われたのが入社のきっかけとなった。

 広告宣伝はもちろん、入社してからは幅広い仕事を手掛けた。今も主力商品の1つである無添加石けんシリーズの「アラウ.」では商品開発を担当した。

 社長が代替わりしてからは、洗剤の原料であるパーム油に注目。持続可能な原料調達の視点に立ち、ボルネオ環境保全活動にも携わる。現社長の更家悠介氏は環境問題や社会的課題の解決に関心を持っており、NPO(非営利団体)の理事などを務めている。「こうした社長の気持ちを読んで、会社を“リモデル”することが自分の仕事」と考えている。

 サラヤの場合、広報宣伝部長はCSR活動の司令塔的立場である。自身がその任に就いてからは、対外活動を活発化した。2010年には、ユニセフの活動と連動し、アフリカのウガンダで衛生状態を改善する「SARAYA100万人の手洗いプロジェクト」を開始。その際、この地の医療現場などでアルコール消毒が実施されていないことに注目し、現地生産のプロジェクトを発案した。現地の豊富なサトウキビを原材料にして消毒液を作り、衛生状態を改善すれば、将来の優良顧客にもなり得る。そう考えてから1年余り、2014年3月に現地生産が実現した。

 広告宣伝からNPO的な活動へと変化する自身の活動をどう見ているのか。ボランティアになってきたのかと尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。

 「昔も今も、やっていることがマーケティングであることに変わりはない。サステナブルでなければ、事業の将来がない。そして、企業のメッセージを伝えるのに、製品そのものを使わない手はないということ」。肩肘張らず「事業拡大のため」と言い切る口調に快い響きを感じた。