斎藤 正一(日経BP環境経営フォーラム事務局長)

2014年1月に環境室長に就任したが「考えない組織」と断じる。楽しく働きがいある組織を目指し、業務改革をすすめる。

柴田 英雄(しばた・ひでお)
豊田自動織機PE環境部環境室長
1967年愛知県生まれ。90年豊田自動織機入社。生産技術部、PE環境部PE室で原動力設備、工事の設計、調達、施工管理、CO2削減事務局、エネルギー管理などを担当。2014年1月から現職

 2014年1月に環境室長に就いたが、お役所的な環境室の体質にはどうにも我慢ならない様子だ。「考えることをしない組織」と不満をぶちまけた。

 承認案件が膨大で、印鑑を押す書類が非常に多い。何をするにも部下は、室長に最終判断を求めてくる。権限委譲ができておらず、人材が育っていない。工場に市販のサビ止めの使用を許可するために16人の担当者が印鑑を押した書類があった。化学物質の管理に慎重になった結果だが、これだけの承認が必要なのかと疑問を抱かないことに腹が立った。

 就任から3カ月が過ぎた4月1日、「環境室の皆さんへ」と題した文書を配り、メンバーに語りかけた。「今までの業務を当たり前と思わず、業務の改廃を常に意識し改善してください」。

 久しぶりに熱い環境部門のトップに会ったと思った。直接的なもの言いの一方で、人なつっこい笑顔をみせる。こうして周りの人間を巻き込んでいくのだろう。3月下旬、トヨタ自動車の創業期を描いたテレビドラマを見た。「先人のモノづくりにかけた熱い思いを受け継ぎ、伝承したい」との思いを改めて強くしたそうだ。

 トヨタグループ発祥の企業である。繊維機械から始まったが、現在は自動車と産業車両が売り上げの9割を占める。入社後は長く原動力設備、工事の設計、調達、施工管理を担当した。30代前半でPE(プラント・エンジニアリング)部に配属されてから、環境とのつながりが生まれた。だが、所属はずっとCO2削減などを担うPE室で、環境経営を推進する環境室長への辞令は、青天の霹靂(へきれき)だったという。

 仕事上の転機は、今から約10年前、1人の上司との出会いだ。資料作りなどを通じて仕事に対する取り組み方を教わった。「どんな資料であれ自分の意思を入れよ」が忘れられない教えだ。出張報告書にしても、その経験を今後の仕事にどう生かすかを書けとたたき込まれた。厳しさだけでなく、部下思いで親しみやすい人間味があった。このときの体験が仕事と向き合う原点になっている。

 「業務改革を進め、付加価値の高い業務にシフトする。楽しく働きがいがある組織にしたい」。取り組み始めたばかりの環境室の改革だが、目指す組織の在り方は明確だ。現状の課題を見える化し、2020年度までの環境室ロードマップを作成した。環境室としては初めて環境活動とコスト削減を結び付けた目標を掲げた。付加価値の高い業務へのシフトとしては、環境戦略の策定や環境技術の先行開発を挙げ中期の重点活動に据えた。

 まだ環境室のメンバーが、新任室長のもとに一枚岩になったわけではない。しかし、「部下を信頼して仕事を任せ、人材を育てたい」と力強く語った。