斎藤 正一(日経BP環境経営フォーラム事務局長)

環境に配慮した自社製品を公表する環境ラベルを導入した。正義感を胸に社内と対話を重ね環境ブランドの必要性を訴えた。

緒方 隆昌(おがた・たかまさ)
川崎重工業理事地球環境部長
1958年福岡県生まれ。82年京都大学工学部卒業、川崎重工業入社。1997~2000年新産業創造研究機構へ出向、2005年システム技術開発センター研究企画部長などを経て2012年から現職

 企業の環境ブランドの確立を、環境部の主要な目標に掲げる企業は少なくない。しかし、社内の抵抗にあって実現できないケースが多いのも事実だ。地球環境部長就任から2年をかけて、「環境のKawasaki」へ大きな布石を打った。6月2日、川崎重工グループは環境配慮に特に優れた自社製品を「Kawasaki グリーン製品」として審査し、外部公表する制度を開始する、と発表した。第1弾として10製品を認定し、これらの製品にはISO14021に準拠した「タイプII」の環境ラベルを表示した。

 企業の自己宣言による「タイプII」の環境ラベルは電機や食品業界などで広く採用されているが、家電を持たない機械メーカーで導入した企業は極めて少ないという。川崎重工は、「モーターサイクル&エンジン」「航空宇宙」「ガスタービン・機械」など7つある事業部門の独立性が強く、顧客も多岐にわたる。今回の認定制度で、「Kawasakiを環境に強いと思われるブランドに育てたい」と語る。

 この制度を作るに当たっては、「本社が、そこまでしなくてもいい」と言われたこともあった。それでも1年かけて全事業部門を回り、「事業部門ごとの個人戦だけでなく、全社共通の環境ラベルを作って団体戦をやりましょう」と粘り強く対話を重ねた。「緒方さんを突き動かした原動力は何ですか」との問いに、「私なりの正義感です」と答えた。

 入社後の15年間はエンジニアとして過ごした。最初の配属先となった溶接研究室で、仕事上のつながりが深かった日本非破壊検査協会に入会する。同協会では長くISO規格の制定・改訂活動に携わり、日本代表として国際会議に何度も出席した。今では同協会の副会長を務める。阪神大震災後の1997年、震災復興のために同社が立ち上げた新産業創造研究機構へ設立準備を含め4年間出向した。そのとき、ハイテクベンチャーのコンサルタントも務め、時代が動く少し前に事業化して収益を上げることの大切さを知った。2005年にシステム技術開発センター研究企画部長に就任後は、全社の技術を一覧し支援する立場にあった。これらの経験で共通していたのは、環境がビジネスに欠かせない時代が来るとの思いだ。正義感という言葉の背景にあるのは、今が全社で環境へ舵を切るタイミングだとの使命感に通じるものなのだろう。

 日本非破壊検査協会では、20代のときに現在も続く出会いがあった。非破壊検査業界の重鎮で、自分の利益ではなく業界や社会の発展のために発言する彼の下には、いつも人の輪ができていた。このとき、「人は、最後に正義感の下に集まる」ことを学んだ。

 誕生したばかりの「Kawasaki グリーン製品」を、これから大きく育てたいと考えている。