「空気」のブランドを作る

「ブランディングには、1つのことを1つのシンボリックなもので印象付けることが重要だ」と、元東京大学教授で丸の内ブランドフォーラム代表の片平秀貴氏は話す。

 その言葉が示すように、ダイキンはシンボリックな製品を2012年、2013年と連続して発売し、「省エネ」のイメージを印象付けた。

 シンボリックな製品とは、2012年に発売した家庭用エアコン「うるさら7」と、2013年の業務用エアコン「FIVE STAR ZEAS(ファイブスタージアス)」である。いずれも新しい冷媒「R32」を業界で初めて採用した(うるさら7は世界初)。R32は従来の冷媒と比べて温暖化係数が約3分の1と小さい。うるさら7は家庭用エアコンでトップの省エネ性能をたたき出し、2012年度の省エネ大賞を受賞した。FIVE STAR ZEASも2013年度に省エネ大賞を受賞している。

業界最高の省エネ性能を実現したダイキンの家庭用エアコン。テレビCMで、新冷媒R32の世界初の採用をアピールし、省エネのイメージを印象付けた

 こうした特徴的な製品を携え、「冷媒に重点を置いたPRをここ1年、過去にないほど展開した」と、片山義丈・広告宣伝グループ長は振り返る。当初、営業部門は「冷媒をアピールしても訴求力がない」と考えたが、環境部と議論し、独自性や特徴を説明するには新冷媒を前面に出すべきと考えるようになった。

 テレビCMでは、R32で省エネに貢献していることを一般の主婦にも分かりやすく説明した。より詳しい内容は、東京の山手線や地下鉄のドア上の広告で発信を続けた。成果が実り、分野別ランキングの「省エネに努力している」では、2013年の9位から2014年は5位に食い込んだ。

 東日本大震災で節電や省エネを求める声が高まるなか、人々の受け止め方も変わった。「従来はダイキンと言っても一般の人に認知してもらえなかった。今は『頑張ってください』と声をかけられる。環境経営とブランドイメージがつながってきた」と藤本悟CSR・地球環境センター室長は言う。

 加えて、2013年以来騒がれているPM2.5(直径2.5ミクロン以下の微小粒子状物質)対応の空気清浄機も、同社のイメージを押し上げたと考えられる。実際、同社の空気清浄機は中国で大きな需要があった。日中韓政府の大気汚染対策協議が始まり、石原伸晃環境大臣は日本の環境技術を積極的に活用すると強調している。

「今後は中国をはじめとしたグローバル市場で、性能の高い製品だけではなく、技術力や企業姿勢に裏打ちされた総合的なブランド力を築きたい。空気というキーワードでブランドを作れるのは我々だけだと思っている」と藤本室長は言い切る。このような企業姿勢を示したことが、ランクアップにつながった。