【インタビュー】

企業は“人格”で選ばれる シンボリックなもので印象を

片平 秀貴氏[丸の内ブランドフォーラム代表、元東京大学教授]

片平 秀貴(かたひら ほたか)氏
国際基督教大学卒業。東京大学で博士号取得後、大阪大学助教授を経て、1989~2004年に東京大学大学院経済学研究科教授。2001年から国内最大規模のブランド調査「ブランド・ジャパン」の企画委員長を務める。2004年4月から現職(写真:中島 正之)

 世の中の人々は、企業を「1人の人間」と感じるようになっている。以前の企業は、話しかけても届かない遠い存在だった。しかし今はフェイスブックやツイッターでコミュニケーションができる。質問すると返事もしてくれる。企業のブランディングとは、「いかに好かれるナイスな人間になるか」ということだ。

 ナイスになるには、商品や価格、環境配慮も1要素になる。企業がシェア向上だけに注力し、人間性を失えば世間からそっぽを向かれる。優しさを持つ人間性かどうかに、人々は敏感になっている。そのなかでも、環境のウエートが増しているのは間違いない。損ねると本当に嫌われる。環境や地球、社会を大事にして生きているかが、ボディーブローのように効く。

 サントリーは、「水と生きる」というコーポレートメッセージを前面に出して、「南アルプス天然水」を生き返らせたと思う。水、水が湧く森、森だから鳥と、一般人が環境からイメージするものとぴったり合うコミュニケーションを上手に展開した。「水」で統一することで、社員の意識も高まった。

 一方、もっと順位が上がってもよい企業がある。例えばTOTO。節水トイレの水使用量を40年で5分の1にした。同社のシェアを考えると、全国の水使用量削減の何割かに貢献している。少ない水で汚れが落ちるよう便器表面の加工も工夫した。その技術はビルの外壁にも応用できる。三菱ケミカルホールディングスの「KAITEKI経営」も評価できる。人や社会にとっての心地よさや地球の持続可能性を定量化する指標を開発し、経営に活用している。カルビーも上位にいてもおかしくない。イモ農家と共に、土を大事にした栽培を進め、商品に生かしている。しかし、環境活動で「土を大事にする」ことをアピールしていないのはもったいない。

 独フォルクスワーゲンが、ある道で30kmの速度制限を守ってもらうキャンペーンをし、アイデアを募集した。大賞を取ったのは、「車の番号を登録し、メーターを付けて速度を測らせ、守った人に褒美をあげよう」というアイデアだった。実行したら平均速度が5kmも下がった。こんなことをしても同社の車は売れない。しかし、応募者は誰が大賞を取るか同社のホームページをたびたびのぞく。キャンペーン実施中は動画サイトのユーチューブを見る。こうして同社は「ルールを守る」というブランドイメージを強化している。いつの日か買い替える時、同社の車が頭に思い浮かぶ。「あいついい奴じゃないか」、ブランドにおける環境とはそういうものだ。

 とことん目立つ商品があれば消費者の心に残る。日産自動車なら電気自動車「リーフ」、日本コカ・コーラなら「い・ろ・は・す」だ。1つのことを1つのシンボリックな製品や技術で印象づける。ランキングが低い企業は、この点をもっと考えたらよいだろう。 (談)