【インタビュー】

伝わるように伝える工夫を 支持するコミュニティを大切に

上迫 滋氏[itgコンサルティング代表取締役、元博報堂]

上迫 滋(かみさこ しげる)氏
筑波大学卒業後、リクルートを経て博報堂入社。日産自動車を約10年間、三菱自動車工業を約4年間担当し、企業ブランド再生事業に参画する。2006年から博報堂ブランドコンサルティングで、常務執行役員として約1500社の相談案件に対応。2014年4月から現職(写真:中島 正之)

 三菱自動車工業が38位と上位に食い込んだのは感慨深い。2000年代前半にリコール問題で経営危機に陥った同社が再建される際、私は博報堂でブランド再生の仕事に関わったからだ。当時のブランドイメージはマイナス。しかし、技術者と話をすると電気自動車の構想を熱く語ってくれた。「それなら電気自動車の開発を前倒しして再生のシンボルにしましょうよ」と提案した。つまり、スタート時から「環境」に旗を立ててブランド再生のストーリーを描いたのである。電気自動車が京都の路地を排気ガスも出さずに小回りよく走るという1枚の絵で情報発信しようと決めた。これが日本初の電気自動車「i-MiEV」の発売、現在のコミュニケーションワード「Drive@ earth」につながった。

 ブランドは1日にして成らず。どういう価値で顧客に選ばれるか中長期的な戦略を描くことが大事だ。その要素が、三菱自動車なら他社に先駆けて電気自動車を市販することだった。描いたらそこに向かって技術やアクションをコツコツと積み上げていく。継続してお城を築く。これがブランド構築の必要条件となる。

 しかし、必要条件を満たしていても、環境ブランド調査で上位に入っていない企業もある。伝わる伝え方をしていないからである。情報過多の現代、こんなに環境に良いことをやっていますと連呼しても誰も聞いてくれない。逆に「うざい」と思われ好感度が落ちる。しかし、面白い、ためになると思わせるコンテンツなら、人々は勝手につぶやいたり、シェアしてくれる。

 ダイキン工業の「雲プロジェクト」を手伝った際、雲をスクリーンにして動画を投射するプロジェクション・マッピングを行った。これがユーチューブで何度も再生された。「面白い。なぜダイキンがこんなことやるのか」と視聴者は思う。雲や空気を大事にして事業を行っているというストーリーに落とし込めば、人々の記憶に残る。企業は伝えたいことを伝えるのではなく、伝わるように伝える工夫をしないといけない。

 ブランディングには、どういう志かという会社のビジョンと、シンボルとなる製品やアクションが必要だ。それに加え、最近は支持してくれるコミュニティの重要性が増している。B to C(消費者向け)ではなく「B with Cの時代」と言われる。志やシンボルを支持する活性化されたコミュニティが生まれているかどうかが大事だ。社外だけでなく社内のコミュニティも欠かせない。コミュニティを巻き込み、みんなの知恵を借りる。環境問題は社会的課題だからコミュニティの重要性はより高まっていくと思う。

 世の中の人々は、単なる社会貢献活動か、本業に組み込んだ持続可能な環境活動か、見分けられる情報リテラシーを既に持っている。こうした人々に対し、伝わるように伝えないと、宝の山がもったいない。 (談)