吉岡 陽(日経エコロジー)

過疎地でリユース家電を販売する「クロネコキャラバン」を年間200回以上開く。高齢者の買い物支援と安否確認を組み合わせた新サービスで事業を創出する。

 ヤマトホールディングスは、全国に毛細血管のように張り巡らせた物流網を活用して、過疎地を活性化させながら事業も創出する取り組みを進めている。少子高齢化によって国内では人口減少が進んでいる。特に、地方の山間部などではその傾向が顕著だ。

 地方の活力が低下すれば、物流を手掛けるヤマトの事業も打撃を受ける。過疎地が抱える課題に着目し、ニーズを掘り起こすことで、成長を維持する。地域貢献と事業拡大を両立させる、CSV(共有価値の創造)の戦略だ。

過疎地に家電を届ける

 ヤマトホールディングスの子会社で引っ越し事業を手掛けるヤマトホームコンビニエンス(東京都中央区)は、中古の家電や家具などを格安で出張販売する「クロネコキャラバン」を実施している。2013年度には、全国で211回開催し、1万人以上を集客した。

 リユース品の販売やレンタルをするリユース事業は、同社の成長分野で、2013年度の売上高は2011年度の2倍近くに拡大している。クロネコキャラバンはその成長に貢献し、利益も確保している。

 キャラバンが赴くのは、家電や家具などを販売する大型商業施設がない、山間部や離島などの過疎地だ。こうした地域では、実物を見て触れながら商品選びをしたいが、身近に家電や家具を安価で販売する店舗がなく、不便を強いられている人が少なくない。ヤマトホームコンビニエンスは、そうした過疎地の悩みに応えている。

 同社は2010年から、引っ越しの際に不要になった家電や家具を買い取って、全国に8カ所ある直営のリサイクルショップで点検・整備して販売している。キャラバンでは、その商品を2台の3tトラックで100点以上運び、過疎地にあるヤマトの配送拠点や公共施設の駐車場などで青空市を開く。

過疎地の悩みに応える
■ リユース品を出張販売する「クロネコキャラバン」
全国8カ所の直営リサイクルショップ(右)で販売しているリユース品を、トラックに積んで過疎地へ向かう

 商品のうち7~8割は全国共通の品ぞろえで、2~3割は開催する地域ごとのニーズに合わせた独自の品ぞろえにする。キャラバンは1つの場所でなるべく定期的に開催し、その都度、来場者から要望を聞き取り、次回の品ぞろえに反映させる。

 キャラバンは2時間ほどで集中的に商品を販売し、その後は購入者の自宅を回って商品を届ける。配送先では、家電製品の設置や配線まで手掛けるほか、希望に応じて清掃や片付け、大型家具の移動といった有料サービスも提供する。

家庭の中の困り事にも対応
■ 1人何役もできるドライバーを養成
ドライバーが配送先で家電の設置や配線まで責任を持ってできるよう訓練する(左)。清掃や片付けなどの有料サービスを訓練する専用施設を東京・羽田の物流施設の中に設置

 過疎地は高齢者の世帯も多く、家の中で困り事を抱えているケースが少なくない。ドライバーが配送の際に丁寧に困り事を聞き取り、必要に応じて柔軟に対応する。「雪国では雪かきなどの要望が多いため、サービス化を検討している」と工藤陽介財務戦略部長兼オペレーション戦略部長は話す。

 もともとリユース品の出張販売は、2011年に東日本大震災の被災地支援のための事業として、震災から1カ月半後に宮城県石巻市でスタートした。

 現地で勤務していた社員が、避難所を回って水や毛布などを届ける活動をする中で、冷蔵庫や洗濯機といった生活に不可欠な家電製品が手に入らずに困っている被災者が大勢いることに気付いた。

 「ヤマトグループの物流網を生かして被災地で格安の青空市をやろう」。そのアイデアが実を結び、青空市は大盛況となった。同年12月までに青空市は東北地方で40回を数えた。

 青空市の取り組みが各地域の責任者が集まる「統括支店長会議」で紹介されると、「被災地以外にも、家電や家具を安く気軽に買える場所がほしいというニーズがあるはずだ」と、全社に活動が広がっていった。

 「キャラバンは各地で好評を博した。震災前は店舗を増やす方向でリユース家電の販売拡大を考えていたが、出張販売の方が過疎地のニーズに応えられるし、固定費がかからずトラックやドライバーといった経営資源を有効活用できることが分かった」。先出の工藤部長はそう語る。

 引っ越しは休日に集中するため、平日はトラックやドライバーの稼働率が下がる。一方、キャラバンの顧客は主婦や高齢者が中心のため、平日に開催できる。平日に出張販売をすることでコストだった車と人が利益を生むようになり、リサイクルショップの在庫の回転率も上がった。過疎地の活性化に貢献しながら、本業の強化にも結びつけるCSVが実現した。2014年度は開催数を250回に増やし、事業拡大を図る。

 ヤマトグループは、別の角度からも過疎地が抱える課題の解決に乗り出している。