馬場 未希(日経エコロジー)

地球温暖化の「適応」ソリューションの提供で、CO2削減に貢献する。同時に自社やサプライチェーン排出量の抑制にも力を入れる。

 「社会価値」を創造する事業を通じて、サプライチェーン排出量の5倍に相当するCO2の削減に貢献する──。NECは2014年7月、こんな新目標を打ち出した。

 同社のサプライチェーン全体からのCO2排出量は、2013年度に756万tだった。これが2020年度には1000万tになる見通しである。排出の抑制に力を入れるものの、事業拡大を織り込んだ試算だ。

 同時に2020年度までに、事業を通じて排出量の5倍に当たる5000万tのCO2削減貢献を目指す。同社が経営資源を集中して進めるICT(情報通信技術)ソリューション事業の拡大が鍵となる。

「適応」通じた削減貢献を加速
注: 2013年度は実績、その他は見通し
2017年度は公開していない

成長のけん引役がCO2削減

 同社は2013年4月に発表した中期経営計画に「社会価値を創造する企業への変革」を盛り込んだ。その推進力が、ICTを生かした「社会ソリューション事業」だという。

 具体的には、政府・自治体向けの防災やセキュリティなどのソリューションをはじめ、企業向けの流通や物流、交通ソリューション、通信事業者向けの情報ネットワークソリューション、スマートエネルギー事業などがある。同社が得意とするICTやビッグデータ処理技術を生かし、社会の安心・安全や、エネルギー効率の改善、そして温暖化防止、気候変動への対処などといった、社会の課題解決につながる価値を提供する。

 2012年度に全社売上高の59%に当たる1兆8100億円を売り上げた同事業を、2015年度に同7割に当たる2兆2100億円に伸ばす。2015年度以降も同社の成長のけん引役にする計画だ。

 CO2削減貢献の目標は、中期経営計画と連動している。NECの堀ノ内力・品質推進本部長代理 兼 環境推進部長は、「社会に貢献するソリューション事業は、省エネやCO2削減といった温暖化防止や、気候変動によるリスク軽減に貢献する」と話す。続けて、「NECが提供する社会価値の1つである『社会のCO2削減への貢献』を、全社の環境目標に組み込んだ」と説明する。

環境目標を経営計画と連動させた
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 6年後に5000万tものCO2削減貢献を達成するため、気候変動・異常気象への影響に備える「適応」に関するソリューション事業を強化する。

 例えば同社が、水道事業者を中心に販売を始めた「漏水監視サービス」は、ビッグデータ収集・分析の最先端技術を使って上水道の漏水状況を高い精度で検知できる。気候変動による干ばつで水資源の枯渇が懸念されるなか、水利用の無駄を抑え、効率的な利用につなげる。

 地域の上水道管に、漏水の微細な振動を把握できる通信機能付きのセンサーを多数接続し、得られたビッグデータをクラウドシステムで解析する。こうすることで、水道事業者は漏水の発生状況と発生地点を素早く正確に把握できる。漏水の予兆を把握して、未然に防ぐこともできる。

 漏水率を引き下げると、造水や、給排水に必要なポンプを動かすエネルギー消費を減らせ、CO2削減にもつながる。設備を的確に保守できるため耐久性も上がり、資源消費の削減にもつながる。検知システムの導入によって社会で排出するはずだったCO2の削減にどれだけ貢献できたか。これを把握し、目標達成に向かって積み上げる。

 実は海外では、上水道からの漏水率が高い。監視サービスは2014年9月5日に販売を始めており、今後3年で国内外100団体への販売を目指す。