聞き手/田中 太郎(日経エコロジー編集長)

1970年代から省エネを進めてきた鉄鋼業界でも、発想次第で新技術は見つかる。世界でもCO2排出が少ない日本の鉄鋼業はエコプロダクトを縁の下で支えると主張する。

小倉 康嗣(おぐら・やすつぐ)
JFEスチール代表取締役副社長
1952年生まれ。78年東京工業大学大学院修了、日本鋼管入社。2003年JFEホールディングス環境ソリューションセンター企画部長、2007年JFEスチール常務執行役員、2008年JFEエンジニアリング取締役専務執行役員、2012年から現職
写真:鈴木 愛子

――小倉副社長は社内の環境対策をはじめ、経団連や日本鉄鋼連盟などでも長年、環境に取り組んでいます。目下、最も関心を寄せているテーマは何ですか。

鉄は縁の下でエコを支える

小倉康嗣氏(以下、敬称略) 何といっても、素材産業として最終製品を製造する顧客企業に対し、いかに環境に良いものを提供するかですね。もちろん、製造プロセスにおけるCO2削減は責務としてやらなければならないことで、淡々と進めていきます。しかし、キーワードを挙げるとすれば、最終製品のCO2削減にいかに貢献するかです。

 鉄鋼業は設備が大規模で、そう簡単には海外に出ていけません。そこで、まさしく今、国内基盤を再構築して、商品力、コスト競争力で世界を制覇していこうと考えています。世界で勝てるのは、高付加価値製品であり、ボリュームゾーンの中でも新興国ではできない上位のものです。そこを増やしていかなければならない。製品の価値を高める大きな要素の1つが環境性能です。製鉄所としてのCO2排出量は世界で日本が最も少ないことは明らかです。その鉄で作った最終製品はライフサイクルで見ればエコプロダクトそのものです。

――鉄鋼業界は以前からLCA(ライフサイクルアセスメント)のデータを利用しながら、最終製品における素材の貢献をアピールしてきました。

小倉 2012年時点でいうと、自動車や船舶、鉄道、発電など向けに鉄鋼業全体で2362万tのCO2を削減しています。しかし、一般の人にはピンとこないかもしれません。もっとアピールしなければいけないと思っています。

上:ハイブリッド車のモーターや太陽光発電のリアクトルの効率を高める電磁鋼板
下:交流と直流を変換するためのリアクトル

 自動車の軽量化に貢献するハイテン(高張力鋼板)はメディアにもよく取り上げられるので有名ですが、あまり知られていない鉄鋼のエコプロダクトの代表例が電磁鋼板です。ハイブリッド車のモーターや、太陽光発電で交流と直流を変換するリアクトルなどに使われる素材です。電磁鋼板は鉄にケイ素を混ぜて製造するのですが、ケイ素の含有率を6.5%にすると磁気特性が理想の状態になり、リアクトルの交流・直流変換効率を高めたり、騒音や振動を抑えたりするのに非常に効果的です。ケイ素含有率を6.5%にする技術はJFEスチールにしかない独自のもので、日本の太陽光発電には相当な量が使われています。この他にも、目立たないけれども様々な分野で鉄は貢献しているのです。

――縁の下でエコを支えているわけですね。確かにハイテンは有名ですが、電磁鋼板がエコプロダクツを裏から支えていることはそれほど知られていません。

小倉 エネルギーの輸送などインフラでも鉄は貢献しています。例えば天然ガスを輸送するパイプラインです。現在は北の寒い地域を通る案件が多く、非常に強いパイプが必要になります。溶接部分がないシームレスパイプが強いのですが、当社ではシームレスパイプと同等の強さがある溶接管を開発しています。