次期社長を選ぶ際の最も重要な条件

――2008年に出版された著書『MOS改革宣言』を読みました。経営者としてサステナビリティとどう向き合うか、小林社長が格闘している姿を本音で語られているところがとても面白かったです。MOSを導入しようとした当初は社内外からこてんぱんにたたかれたそうですね。なぜそこまでするのですか。

小林 今、原子力発電所が大きな問題になっています。原発はいったん事故が起きると大変な被害が出ます。病気に例えると「劇症肝炎」。しかし、きちっと制御すれば(放射性物質を)閉じ込められます。

 これに対して、地球温暖化の問題は「慢性糖尿病」です。自覚せずに病状が進んでしまう。慢性糖尿病になりながらうまいものをどんどん食べるのは、一見幸せだけれど先はない。やはりダイエットして、自分の健康のことを考える必要があるでしょう。

 同じように、サステナビリティを考えることがマネジメントだと思っています。

 しかし、日本では劇症肝炎ばかりが前面に出てしまい、慢性の方に対してはみな感度が低すぎる。分かりづらいものに対しては、グループの社員も含めてアクションが鈍いと感じます。だからこそ逆に、本気でやらなければ変わりません。

――危機感を持った直接のきっかけは何ですか。

小林 最初のトリガーは、世界経済フォーラム(ダボス会議)や国際化学工業協会協議会(ICCA)などの国際会議です。世界の潮流を肌で感じたことがかなり強烈でした。ダボス会議には5回ほど参加していますが、毎回、メーンのテーマはサステナビリティに関連したものです。グローバル・アジェンダ(国際的な課題)として今、一番重要なのはサステナビリティなんだということをいろいろなところで感じました。これはやらないとえらいことになるな、と気づかされたわけです。

 欧州ではサステナビリティが十数年前からテーマとして浮上し、地球環境問題にも敏感に対応しています。それに比べて、日本ではまだ実感がないなと強く感じます。しかし、大気中のCO2濃度は300ppmぐらいから徐々に上がってきて今は400ppmに達するといいます。これこそ一番危ないなと感じます。逆に、その対策に寄与するものは将来もうかるでしょう。

――KAITEKI経営を進める上で最も難しいと感じたことは何ですか。

小林 これだけ定量化にこだっても、みんなの気持ちが変わるのはやっぱり時間がかかるな、というのが一番の実感ですね。

――小林社長の考えは、次世代の経営者にもきちんと引き継がれるでしょうか。

小林 KAITEKI経営とりわけMOSが分かっていることが次期社長を選ぶ際の最も重要な条件です。

――最後に、「会社を本気で変える」というメッセージを込めて社長室でカエルを飼っていたそうですが、今でも元気ですか。

小林 いや、秘書の手間が大変なので置物に替えてしまいました。しかし、会社を変えるという思いに変わりはありません。