大西 孝弘(日経エコロジー)

環境関連事業の売上高が4年間で倍増、2020年頃には1兆円を目指す。経営者が技術を見極め、継続的な技術投資が業績好調の原動力だ。

 かつてはお荷物だった環境技術が、航空宇宙産業の巨人から最高の評価を受けた。

米ボーイングと東レは2014年11月17日、航空機向け炭素繊維複合材の長期供給で基本合意に達したことを発表した
写真:Getty Images

 2014年11月17日、東レは米ボーイングとの間で新型航空機「777X」向けに炭素繊維複合材(CFRP)を供給する基本合意を結んだと発表した。両社は既に2006年~21年までに航空機「787」向けに約7000億円分の供給契約を締結していた。今回は両社がこの契約を更新し、2014年から10年以上供給することで基本合意に至った。

 「777X」と「787」を合わせて東レの受注額は1兆円を超え、他に類を見ない大型契約になる。加えて、次世代航空機の材料や部品などを共同で開発していく。世界で数多くの企業と取引があるボーイングが、サプライヤーの1社と共同記者会見を開催するのは極めて珍しい。

 炭素繊維は鉄に比べ4分の1の重さで、10倍以上の強度がある。航空機の機体に使うことで軽量化を図り、燃費の向上につながる環境素材だ。CFRPを機体構造重量の5割に使用した場合、従来機に比べて約2割軽くなり、10年間でCO2を2万7000t削減できるという。ボーイングのジョン・トレーシー最高技術責任者(CTO)は、「東レはCFRPの技術力や供給力で最も優れた企業で、そのおかげで(我々は)強い会社でいられる」と語った。

 これまで数多くの企業が炭素繊維を手掛けてきた。その中でなぜ東レだけが突出した成果を上げているのか。それは、記者会見で東レの日覺昭廣社長が語った「粘り強く」「長期的」というキーワードにヒントが隠されている。

欧米企業が捨てた“お荷物”

 素材メーカーにとって炭素繊維事業は長い間、お荷物とも言える存在だった。東レは1970年代から量産したが、巨額投資が必要で償却負担が重くなり、赤字と黒字を行ったり来たりしていた。収益が上がりづらいため、米デュポンや独BASFは次々と撤退した。残った三菱レイヨンや東邦テナックスにしても十分な投資はできなかった。

 東レは短期的に収益が出なくても、中長期の需要を見越し、投資を続けた。ボーイングという最強パートナーの厳しい要求に応え続けることで技術に磨きがかかり、1兆円超の大型受注にこぎつけたのだ。