樋口 武男 氏(写真:山本 尚侍)

 「何のためにする事業なのか」。従業員をはじめ、協力関係にある企業にも、世のためになり、多くの人が喜ぶ事業かどうかを問うてきた。

 2015年の今、環境やエネルギー、食糧問題への対処は重要な課題である。人口問題が懸念されるからだ。2100年、日本の人口は多くても6000万人台に減ると指摘される一方、新興国では人口増が見込まれる。世界では2014年に72億人超の人口が2100年に100億人を超えると予測される。これを念頭に置いて事業を考えるべきだ。

中国で省エネ住宅事業に期待

 そんななか、展開を期待する事業がいくつかある。1つは中国企業と合弁会社を設立して進めている低層工業化住宅部材の現地生産・販売事業である。高断熱・高機密の省エネ性能の高い住宅を中国に提供する。

 2012年、世界のCO2排出量は317億tで中国は世界で最も排出量が多かった。人口もまだ増える。PM(微小粒子状物質)2.5などによる大気汚染も深刻だ。中国企業の若き経営者が、「5分だけ時間をもらえませんか」と私の元にやってきたのは10年ほど前だ。大粒の汗をかきながら「品質が良く省エネ性能も高い住宅を普及させたい」と話す様子に信頼を寄せた。こうした経営者が工業化住宅事業を展開すれば、海外の環境改善につながるだろう。

 出資している蓄電池ベンチャー、エリーパワー(東京都品川区)製の家庭用リチウムイオン蓄電池を導入したスマートハウス事業にも期待している。同社の電池は性能も高く安全性が評価されている。人口減少の時代に電力需要が低下したときも、蓄電池は安定的なエネルギー供給に貢献できるだろう。

 日本は中国、米国などに次ぐ5番目のCO2排出国である。再生可能エネルギーの展開も重要だ。大和ハウス工業では現在、産業用の太陽光発電事業の設計・提案を手掛ける他、風力発電にも取り組んでいる。今後は小水力発電にも注力する計画だ。

 創業者の石橋信夫は、20年以上前から「21世紀は風と太陽、水の時代」と説いていた。石橋はまだ開いていないドアの先を見る人だった。「先の先を行け」という創業者の教えを具現化し、創業100周年に当たる2055年には、売上高10兆円の企業を目指したい。