斎藤 正一(日経BP環境経営フォーラム事務局長)

入社以来、様々な形で「環境」に携わってきた。非財閥系商社、伊藤忠の伝統である現場主義を信条とする。

小野 博也(おの・ひろや)
1961年三重県生まれ。85年早稲田大学政治経済学部卒業、同年伊藤忠商事入社。化学品部門に配属、98年より全社横断的な開発業務などに従事、2007年より環境ビジネスを担当、2012年4月から現職

 これほど様々な形で環境に携わった商社マンは珍しいだろう。入社後の配属は化学品部門で中国や東南アジア向けの貿易ビジネスに従事した。劇物の硫酸や塩酸から毒物のシアン化ソーダ、さらにフロンガスなども扱い、環境側面から言えばマイナスの仕事からのスタートだった。「個人的にはこうした商品を扱って利益を上げることに疑問を感じつつ仕事をしていた」と話す。

 13年間、化学品部門に在籍した後、会社人生の転機を迎える。川下の仕事がしたいとの希望がかない、リテール事業室に異動したのだ。その後、大手流通業との提携プロジェクトなどを手掛けた。岡藤正広現社長が直属の上司になったのも、この頃のことだ。大型の提携や出資などのプロジェクトが入ると出番になる時代が続いた。

 開発戦略室に在籍していた2007年、社内カンパニーを横断する案件を次々にまとめた手腕が買われ、環境プロジェクトの担当に任命される。環境ビジネスでいかに利益を上げるかが求められる仕事だ。タスクフォースを組み、社内の環境関連ビジネスを調べ上げて経営陣に提言。中期経営計画「Frontier2010」では重点分野として「太陽光、蓄電池、水」が明記された。この時代、スマートシティープロジェクトや、米国大手電力会社と先端エネルギー技術に関する提携案件などを手掛けた。

 そして、2012年からはCSR・地球環境室長として、利益と離れた部分で環境やCSRの仕事に関わっている。東日本大震災の被災地支援と海外での支援活動が2本柱だ。被災地支援ではファンドを作り子どもの夢を応援したり、岩手県陸前高田市で収穫したコメ「たかたのゆめ」の販売を支援している。

 海外への支援活動は、室長になってからプログラムの数を増やした。インドのコットン農家に対して、オーガニック栽培への移行を支援するプログラムもその1つだ。伊藤忠が「Mr.Children」のコンサートグッズとしてオーガニックコットンを扱ったことがきっかけになった。この仕事に携わった繊維カンパニーの担当者がインドに渡りコットン農家の貧困を目の当たりにしたことが、今の取り組みへと発展した。

 小野さんは、この事例を引き合いに出しながら、「当社の特徴は現場主義、この点ではビジネスもCSRも変わりはない」と話す。自らも「まず現場に飛び込み、何が起きているかに興味を持つこと」を信条としている。これまでの会社人生を振り返り、「現在が自分の気持ちを最もストレートに出せる部署」というのが偽らざる本音だ。それだけに「環境・CSR活動のレベルを上げて他社のお手本になるような部署にしたい」と意欲を示す。