寺師 茂樹 氏(写真:今 紀之)

 2014年末に燃料電池車「MIRAI(ミライ)」を発売した。水素というエネルギーの選択肢を増やす取り組みになる。燃料電池車はハイブリッド車(HV)より早い1992年から開発を始めた歴史がある。

 現段階では確かにインフラやタンクの積み方など様々な課題はある。ただ十分に普及する可能性があるという領域に足を踏み入れた。HV「プリウス」のように、世代を重ねる度にユニットサイズや性能、コストなどを改善していく。インフラとの関係は「花とミツバチ」という言葉がふさわしいのではないか。時間をかけてもいいから、関係者が協力しあって成長することを望んでいる。

将来需要を見通しTNGA開始

 いろいろな地域の需要や規制、燃料に対応し、クルマの種類が膨大に増えている。開発工程が急増する一方で、開発人員は急に増やせない。そんな背景から、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)という取り組みを始めている。5~10年先の規制や需要を予測して、ベースになるプラットフォームやユニット関連をできるだけ共通化しようとしている。

 TNGAは生産にも影響する。世界で7~8割ものモデルを一新し、設備更新もするので、製造部門にとっても新しい技術を導入する絶好のチャンスだ。日本で「環境のマザー工場」を作って、世界に展開することも考えている。

 工場単体での取り組みだけではなく、工場間の連携でもCO2排出量の削減などの効果を上げられる。例えば、米国では工場を追加で作っていったため、近くにエンジン工場があるのに遠くの工場からエンジンを調達せざるを得ず、効率が悪いケースがあった。近くのエンジン工場から調達できるようになれば、物流費やCO2排出量を削減できる。世界中のオペレーションを見直すことは、環境にもいいことなのだ。

 豊田章男社長は、2015年3月期の業績見通しについて「意志ある踊り場」と表現した。TNGAは会社人生で一度あるかないかの巨大プロジェクトで、オペレーションの見直しには兆単位の資金がかかる。2014年は将来の成長を見据えて、TNGAの検討を続けてきた。2015年は持続成長の構えを実行していくフェーズになると思う。