吉岡 陽(日経エコロジー)

東日本大震災の教訓を胸に、災害に強い街づくりを目指す。省エネと創エネを非常時のエネルギー確保につなげる「ecoBCP」を成長分野の柱に据える。

 平常時には、省エネなどの高い環境性能を発揮し、非常時にはエネルギーを自給自足できる。清水建設が、そんなビルや複合施設の開発に注力している。清水建設はこうしたコンセプトを、環境(eco)と事業継続計画(BCP)が両立するという意味で「ecoBCP」と名付け、新しい成長分野の柱に位置付けている。

 ecoとBCPの取り合わせは、一見不思議にも思える。環境性能と災害に対する強さは、一体どう関連するのか。ecoBCP事業推進室の那須原和良室長は、「わずかなエネルギーで運営できる施設は、災害などで外部からの電力供給が止まるような事態が起きても、小規模な自家発電設備で機能を維持できる。省エネを極めれば、災害にも強い建物にすることができる」と説明する。

 人口減少が進む中で、建設業界は厳しい競争を繰り広げている。そうした中で、省エネや創エネにきちんと投資することで、災害にも強い建物になることが伝われば、高度な省エネ設計とエネルギー関連のインフラとをセットにした高付加価値の開発が受注できる。

 さらに、首都直下地震や南海トラフにおける連動型巨大地震の脅威が迫る中、災害に強い街づくりは、CSV(共有価値の創造)の観点からも重要性を増している。

 清水建設にとって、事業拡大と社会貢献の両面で将来を占うカギとなるのが、このecoBCPなのだ。

本社のCO2排出量を6割減

 2012年に完成した東京都中央区京橋にある同社の本社ビルがecoBCPを分かりやすく体現している。22階建て、延べ床面積約5万2000m2の高層ビルには、随所に徹底した省エネ設計が施されている。

 外断熱やペアガラスなどで断熱し、室内には細いアルミ管を内蔵した「輻射天井パネル」を採用する。夏場はアルミ管の中に水を循環させて、効率よく室温を下げる。地下にある地域冷暖房施設が供給する7℃の冷水を近隣のビルが冷房に利用する。戻ってきた水は15℃とまだ冷たいので、同社が輻射天井パネルでもう一度使って施設に還す。こうした徹底した省エネで、空調の消費電力量を従来比で約43%削減した。

 一方、照明の消費電力量は、従来に比べて実に約80%削減している。太陽の高度に合わせて自動で傾きを調整する「グラデーションブラインド」を採用し、室温が上がり過ぎない範囲で自然光を最大限に利用する。非常時には、昼間はすべての照明を消しても業務が行える。

 天井照明もパソコンの使用に必要な水準を確保しながら一般的な明るさの半分程度に抑えた。書類や図面を読む際には卓上の明るい照明を使う。こうすることで、作業ごとに適した明るさを維持しながら、離席中などの無駄な照明を減らせる。

 こうして本社ビルの床面積当たりのCO2排出量を、東京都にあるオフィスビルの2005年の平均値と比べて、約60%減らすことに成功した。

左:CO2排出量を約60%削減した本社オフィス
右:清水建設(中央のビルが本社)は周辺の企業と共同で、地域冷暖房施設の活用や災害対策に取り組む

 ビル側面に設置した約1000枚の太陽光発電パネルと蓄電池を利用して電力のピークカットをするなどして、エネルギーコストも抑える。非常時には、自家発電設備や地域冷暖房施設の蓄熱なども併用し、電力供給が止まっても72時間はビルを運用できる。これにより、首都直下地震などの際には2000人の社員の他に、周辺地域の帰宅困難者を2000人収容できるようになった。

 さらに2013年には周辺の企業とともに、「京橋スマートコミュニティ協議会」を設立。災害時に地域住民に対して共同で支援をすることなどを取り決め、事業継続マネジメントシステムの「ISO22301」の認証を地域として国内で初めて取得した。

 エネルギーコストと環境負荷を下げ、事業継続性を高め、防災拠点として地域社会にも貢献する。それが、清水建設が思い描く「ecoBCP」の姿だ。