吉岡 陽(日経エコロジー)

地元の未利用材でエネルギーを作り、購入電力の9割減を達成する。林業や製造業など地元経済の活性化につなげ、企業競争力の維持を目指す。

 再生可能エネルギーの利用を増やすことで環境負荷を下げながら、同時に地方経済の活性化も図る。建設機械大手のコマツが、そんな一石二鳥の環境戦略を推し進めている。

 「購入電力量を2010年度比で90%以上削減する」。コマツは、主力生産拠点である粟津工場(石川県小松市)の敷地内にある建機の組み立て工場を建て替え、2014年5月に竣工した。その際に掲げた環境目標を見て、多くの関係者が驚いた。そして、2015年度にもこの目標をクリアする見込みだ。

 コマツは2011年の東日本大震災によって電力調達が不安定になった経験を踏まえて、2015年を目標にした「電力半減プロジェクト」に取り組んできた。先進的な省エネと生産技術の革新によって、電力会社からの購入電力を大幅に引き下げ、環境負荷の少ない、災害に強い生産体制を構築するのが狙いだ。新組み立て工場でも、省エネ設備の導入や工程改善などの生産性向上によって、購入電力量を2010年度比で52%削減することに成功した。

 新工場では、「全面地下ピット構造」という先進的な設計を採用した。配管や電源設備などを床下に設けた空間(ピット)に設置することで床上のスペースを有効利用する。さらに組み立てラインの無駄を徹底的に省き、長さを従来より3割近く短縮することに成功。こうした省スペース化によって以前は2棟あった建屋を1つに統合できたため、空調や照明の電力を大幅に削減できた。さらに、検査工程などをICT(情報通信技術)を活用して自動化するといった生産技術の革新にも取り組み、面積当たりの生産性を2011年度比で実に2倍に引き上げた。

未利用材で創エネ

 こうして「電力半減」を達成した新組み立て工場だが、それだけでは終わらない。創エネによってさらに40%の購入電力の削減を目指しており、2015年度にも達成する見込みだ。創エネの中核を担うのは、地元の未利用の間伐材を用いたバイオマス・コージェネレーション(熱電併給)・システムだ。

 コマツは2015年度までの3カ年の中期経営計画「Together We Innovate GEMBA Worldwide」の中で、本業を通じて社会課題の解決に貢献するCSV(共有価値の創造)を経営戦略の柱に据えている。これを受けて新工場では、バイオマス利用で購入電力量を削減するとともに、それを通じて地元林業の再生に貢献することも目指している。

 4月に本格稼働したこの施設は、木質チップを1時間に1.2t燃焼させ、合計3200kWhの熱と電気を取り出す。チップを燃焼させて得た熱エネルギーを3段階で回収するため、熱利用効率は70%に達する。

■ 熱を使い尽くすバイオマス蒸気ボイラーシステム
3段階でエネルギーを取り出すことで、熱利用効率は70%に達する。一般的に発電に特化した設備の場合、同15~20%にとどまる
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 発電に特化して、せっかくの熱を捨てているバイオマス施設は少なくない。この場合、熱利用効率はわずか15~20%にとどまるが、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)では、1kWh当たり32円(2014年度)と買い取り価格が高いため、それでもペイする。

 一方コマツは売電はせず、工場で熱を使い尽くすことで、経済性を高めている。電気や空調用の冷温水を作るだけでなく、蒸気式コンプレッサーで圧縮空気を作り、組み立て工場でボルトを締める動力に利用するといった徹底ぶりだ。

 このシステムによって、組み立て工場では年間で約150万kWhの購入電力と800㎘の重油の使用を削減できる。設備投資に約4億円かかったが、国と石川県から約2億円の補助を受けたため、約7年で投資回収できる。野路國夫会長は、「FITを利用すれば、年間で約3億5000万円の売電収入が得られる。しかし、それは国民負担によるものだ。そんなケチな発想で取り組んでいるのではない」と言い切る。