斎藤 正一(日経BP環境経営フォーラム事務局長)

35歳で電気設備工事会社から中途入社した異色の経歴を持つ。アルプスイズムの影響で、仕事の勉強に力を注ぐようになった。

山口 正孝(やまぐち・まさたか)
1972年茨城県生まれ。95年東海大学工学部卒業、2007年アルプス電気入社。新本社の建設プロジェクトの担当などを経て、2011年から環境グループ配属、2014年より現職

 35歳の時に仙台に本社を置く電気設備工事会社から中途入社した異色の経歴を持つ。工業高校の電気科で第一種電気工事士の資格を取り、大学で電気工学を学んだ電気工事のプロだ。転職後すぐに新本社の建設プロジェクトに関わった。

 新本社を建設する場合、多くの企業ではゼネコンが示した案をそのまま認めるだけのケースが多いという。この点、アルプス電気は社内にプロジェクトチームを組織し、どのような機能を持つ新社屋にしたいかを徹底して議論した。この努力は建築の環境認証制度「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)」で最高のSランクの取得に結び付いた。

 このプロジェクトに携わった経験は、アルプス電気の企業風土を知る良いきっかけになった。同社の社風を表す「アルプスイズム」という言葉は、「Work Hard、Study Hard、Play Hard」に置き換えて語られることが多い。仕事に誠実に取り組み、新しいことへ挑戦するために勉強する、仕事から離れた時は社員みんなで楽しむといった意味を含む。

 山口さんも、このプロジェクトを経験してBEMS(ビルエネルギー管理システム)を一から勉強し、社内でスペシャリストと呼ばれるまでになった。「転職して最も変わったことは、仕事を進めるために『もっと仕事に関する知識を得たい』と思うようになったこと。Study Hardの影響を強く受けている」と話す。アルプスイズムによって山口さん自身も成長したのだろう。

 2011年に環境グループの配属となり、省エネワーキンググループの主査として社内の省エネ推進に取り組んだ。特に力を入れたのが、中国の生産現地法人の省エネである。2015年4月には寧波アルプスに中国6拠点の担当者を集め、初めて中国で省エネワーキンググループの会合を開いた。中国で最も省エネが進んだ工場を会場にしたことで、他の工場の担当者に大きな刺激を与えることができたという。

 2014年4月、環境課長に就任した。課長として心がけてきたのは、環境関連の法規制動向を他部署に指示・伝達していた組織からの転換だ。「今後は本業の部署との連携や課内のメンバーのマインドチェンジに力を入れたい」と組織の改革を目指す。アルプス電気が販売する環境センサーをユーザーの視点から情報提供することでの販売支援、生物多様性のボランティア活動を始めることで課員が輝き主体的に取り組める場の用意──。どんな青写真があるのかと質問すると、組織を変えるための具体的なアイデアが次々に飛び出してきた。

 真剣な眼差しで語る表情を見ながら、山口さんがかじを取る同社の環境活動は、数年後、間違いなく面白くなっているだろうと感じた。