計画より実現の道筋を語れ

 日本の学校法人で初めてPRIに署名した上智大学がESG投資に乗り出した背景にも、少子化に伴う財政難がある。学生数が減り補助金も減少し、日本の私立大学の30%が赤字、45%が定員割れに陥っている。

 そんななか、「自助努力で収入を得ることが不可欠。奨学金や教育・研究費を安定的に捻出するためESG投資で運用することにした」と、上智大学特任教授で上智学院財務担当理事補佐、IR推進室長の引間雅史氏は話す。引間氏は元日興アセットマネジメントの社長。500億円の財源のうち約3割を国内外の株式に投資してESG運用を始めた。

 方法は2つ。1つは「MSCIローカーボン・ターゲット・インデックス」というESGインデックスを用いた投資だ。温室効果ガス排出量や化石燃料保有量の小さな企業の構成比率を高めたもので、温暖化対策を進める企業に重み付けして分散投資する。2016年11月から運用を始めた。

 もう1つは、環境、都市化、サプライチェーン管理、人権などのESGテーマで競争力の高い企業を選んで投資するもの。2015年夏から運用を始めた。各テーマで業界や企業を絞り、最終的には企業を訪問して評価した。テーマに対する経営者の考え方や財務要因も加味する。こうして数十銘柄に絞って投資している。

 サプライチェーン管理や労働問題への対応もみている。「昨今、途上国でストライキが起きることがリスク要因になっている。日本の運用機関はガバナンスに軸足を置いた銘柄を選定しがちだが、環境や社会の重要性も高まっている」と引間氏は訴える。この投資は市場平均を年率3%以上上回るリターンを得ている。

 セコム企業年金基金は、2011年にいち早くPRIに署名し、2015年には「モントリオール・カーボン・プレッジ(炭素公約)」にも日本の機関投資家として初めて署名した。

 リーマン・ショックで影響を受けた反省から、同年金基金の持続性を高めるためにESG投資に踏み切った。とはいえESGに取り組む企業への投資で市場平均を上回る収益を得られるか効果は分からなかった。そこでESGで収益率に効果のある要素が何かをシミュレーションしたところガバナンスという結果が出た。2011年3月からガバナンスに注目したESG投資を始めた。

 資産約870億円のうち約4割をESG投資に回している。企業のESGの方針や取り組みを調べ、ガバナンスの優れた企業に着目して、確信度の高い十数〜50銘柄に絞ってアクティブ運用をしている。

 「ガバナンスの良い企業は会社の方針が浸透し、外部の意見を取り入れる柔軟性がある。不祥事を起こす可能性も低い。こうした企業にエンゲージメントするとさらに良くなる。企業も成長して価値を引き上げられ、SDGsなどの社会課題を共に解決できる。投資は大成功する」と同基金の八木博一顧問は説明する。

 複数の運用機関に委託しているが、彼らはエンゲージメントの際に、企業の経営理念やESG方針の他、CDPや科学に基づく中期の温室効果ガス削減目標「SBT」設定、女性活用の状況などを聞く。工場や支店を訪れて従業員の話を聞くと経営層と現場のギャップも分かるという。

 「ESGは非財務情報ではなく、財務になり得る“将来財務情報”。対話時に中期経営計画を語る企業もあるが、計画をどう実現するかが我々の関心事。KPI(重要業績評価指標)や達成時期など実現可能性を推し量れる情報を出すことが大切だ」と助言する。同基金は平均して年率5%以上の運用ができているという。