対話で変わったシェル

 エンゲージメントで手腕を発揮するのは、機関投資家から委託された運用機関である。企業からESGへの考え方を引き出すのが腕の見せ所だ。通常、運用部門のスタッフがアナリストを伴って企業を訪れる。

 ニッセイアセットマネジメントは、2015年度に1563件、うち経営層と614件のエンゲージメントを実施した。ESGに関して13項目のチェックリストで企業を評価。日本株550銘柄を4段階で格付けしている。

■ ESGエンゲージメントのイメージ図
注:複数の運用機関の資料から本誌作成
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 「全体的にはガバナンスの評価の要素が大きいが、業種によって重要な要素を見極めている。石油・石炭、金属、繊維、化学などの素材関連では環境が大きな要素を占める」と同社の株式運用部担当部長でESG推進室長の井口譲二氏は打ち明ける。環境課題を企業価値につなげているか、環境方針を企業戦略に織り込んでいるか、環境技術や製品が業績にプラスになるかなどを分析する。

 りそな銀行のパッシブ運用では、グローバル問題として気候変動とサプライチェーンのリスク管理を重視してエンゲージメントしている。気候変動のリスクと機会をどう特定し、保有資産が座礁資産化するリスクをどう分析評価しているかを聞き、CDPの情報開示も求める。国連ビジネスと人権に関する指導原則に基づいた人権リスクの情報開示も促す。

 同社アセットマネジメント部株式運用室長の山下恵史氏は、「エンゲージメントでは企業の原体験が何か、存在価値が何かを語ってほしい。ビジネス戦略、強み・弱み、将来展望のストーリーや哲学をみる」と言う。ESGで横串を通して投資した結果、2年前に比べリターンが1.5倍になりESGで上乗せされたという。

■ 有効なエンゲージメントの例
出所:英ハーミーズイオスの資料から作成
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 エンゲージメントで企業は変わり得る。1例が英ハーミーズイオスというエンゲージ専門会社が英ロイヤル・ダッチ・シェルと行った対話だ(右の表)。シェルは当初、パリ協定の2℃政策は実現の可能性がないと気候リスクの情報開示をこばんだ。しかしハーミーズイオスが経営層に継続的に働きかけたことで、2℃目標を公に支持するようになった。

 日本総合研究所の足達英一郎理事は、「対話は企業の優先課題と投資家が考える重要課題をぶつけて議論する場。気付きや信頼関係構築につながり、自社を理解してくれる投資家を探すこともできる」と話す。対話を上手に活用することが大事だ。

(日経エコロジー2017年1月号から転載)