経営を強くするガバナンス

 伝統的に企業の報告書は財務面に重点が置かれてきた。非財務面での情報開示は、経営戦略との関連性を示すものではなく、「企業市民としての責任」に関するものばかりだった。

 しかし、非財務情報に対する投資家の関心は高まる一方である。企業は非財務側面での取り組みを、経営戦略に活用し、その情報の開示に注力する必要性がある。

 さらに経営者は、ビジネスの拡大のために非財務面での知見が活かされるように、社内体制をいま一度、整えることが有効である。

 現場レベルでは、CSR・環境関連部署が経営企画などの戦略立案を司る部署と協働する体制を整えることである。またより上層部では、取締役会で、非財務面での知見が豊富な独立社外取締役を招聘(しょうへい)することである。こうした改革は、海外運用機関の要請にも応えるものとなる。

 そのためには、独立社外取締役の招聘の前提として、社内に必要な知見を十分に蓄積する必要もある。必要な知見は、実際に投資家に説明する戦略にも、当然反映されるものでなければならない。例えば数多い非財務情報の項目のうち、特に働き方改革や、持続可能な開発目標(SDGs)に対する貢献は、国内外の投資家の関心事となっており、その戦略説明が求められている。

 働き方改革では、労働生産性の向上が求められているものの、その取り組みが結局、事業の稼働率低下に終わるのではないかとの危惧が投資家の間に根強く存在する。そのため、働き方改革の実践により労働生産性の向上につながっている事例に関心が集まる。

 SDGsは、持続可能な開発のため、17の分野で目標が掲げられ国連で採択された。非財務情報に関する企業と投資家との対話の糸口として、統合報告書での記載が定着しつつある。ただしこの目標の達成を重視するあまり、自社の競争優位を生かせない事態を投資家は懸念している。

 また、従来からのCSRの取り組みを、SDGsに対する取り組みとして後付けする企業行動は、好意的には受けとめられていない。SDGsを起点として、企業がその達成への貢献の取り組みを通じて、どのように業績や競争力の向上につなげられるかというストーリーを示すことが望まれている。

 非財務の取り組みと経営戦略の統合による、日本企業におけるコーポレートガバナンスの変革を期待する。

(日経エコロジー2017年10月号から転載)

黒田 一賢(くろだ・かずたか)
岡三証券、EIRIS(英ESG調査機関)で財務面、非財務面の企業調査に従事。現在は株式運用のための非財務面の企業評価業務などに従事。運用機関向け調査会社の格付会社ExtelやNGOのSRI-CONNECTが主催する独立系調査機関所属非財務アナリストランキングIRRI 2012で世界4位、世界の主要機関投資家が購読する情報サイト「Responsible In vestor」の定期コラムニスト