長時間労働で競争力低下

 第2の人権リスクとして浮上してきたのが、国内の従業員の長時間労働問題だ。過重労働による電通社員の自殺を受けて国も対策の強化に乗り出した。各社から次々と長時間労働や違法労働が発覚した。

 厚生労働省は2017年5月から、労働基準関連法に違反した企業リストのホームページ上での公開を始めた。「これまでも各署で公表していたが、効果があまりなかった。企業に注意喚起するため一斉公開に踏み切った」と労働基準監察室副長の黒部恭志氏は意図を話す。

 2016年4月から2017年3月までの1年間に監督指導を行った2万3915事業所のうち法令違反があったのは66%の1万5790事業所に上った。その大半が月80時間を超える違法な時間外労働だった。事前調査を基に監督指導に訪れる企業を決める。その数は2007年の12万6000件から2016年は13万5000件に増えている。

 日本の長時間労働を世界も問題視している。OECDの調査からは、先進7カ国の労働時間あたりのGDPが日本は最下位であり、生産性が低いという事実が浮かび上がった。

 MSCIが、月残業時間が業界平均よりも短い企業群と長い企業群でROE(自己資本利益率)の年平均成長率を計算したところ、前者は19.2%、後者は10.3%であることが判明した。長時間労働が身体や精神に悪影響を及ぼすだけでなく、スキルを高めてネットワークを広げる機会を奪ったり、生産性を低下させて競争力低下につながる恐れがあるとMSCIは結論づけている。

■ 主要先進国の労働時間あたりのGDP
長時間労働は生産性も低い。OECDは先進7カ国の労働時間あたりのGDPを調査。日本は先進国で最下位であり、生産性が低いと考えられる
出所: OECD

繊維、自動車、農業は要注意

 第3のリスクは国内で働く外国人技能実習生の人権問題だ。繊維、農業、建設、自動車などの下請け工場に多いとされる。

 厚労省による実習生の労働状況の調査によれば、2016年、監督指導した5672事業所のうち7割に当たる4004事業所で労働基準関係法違反が見つかった。時間外労働が1カ月130時間を超える例や、月5万~6万円程度の低賃金で雇用して時間外労働に時給300円ほどしか払わない例も散見された。

 「最大の問題は実習生が不満を言えない隷属した状況下に置かれていること」と、自由人権協会の理事、旗手明氏は指摘する。彼らは自国の送り出し機関に保証金を払い、ブローカーである監理団体の仲介で企業に実習に来る。住居費などを天引きされ、手元にほとんどお金が残らない例や、1部屋に3~5人押し込められる例もあったという。しかし「不満を言えば本国へ強制帰国させられ、保証金が戻らないばかりか、違約金を払わされることを恐れて意見を言えない」と旗手氏は指摘する。

 2016年末時点の外国人労働者は約50万人。そのうち4割の約23万人を外国人技能実習生が占める。2017年11月には技能実習法が施行され、制度に法的拘束力が生じ、実習生への人権侵害に罰則が設けられるようになる。国は実習生の人数を現行の2倍まで増やすことを認めている。今後もリスクは存在し続けるだろう。

 彼らが働く現場は、大企業の下請けや孫受けだ。人手不足を安い労働力で賄おうとするところに人権侵害が忍び寄る。「企業はまず下請け工場に実習生が何人働いているか現状を把握するところから始めてほしい。人権侵害があった場合は契約を打ち切ると表明すべき。それが企業の責任だ」と旗手氏は主張する。